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旅行の記憶と何気ない日常を

ガウディの足跡6 グエル公園

Park Guell

時期◼️1900-1914  ガウディ48-62歳

場所◼️ オロット通  Carrer d'Olot, 13 08024 Barcelona

現在◼️公園 

 

実業家グエルは自分の繊維工場の労働者達のために快適なコロニーを作ろうと考えました。市場、教会、そして60棟もの住宅など、バルセロナ郊外の地中海の見渡せる荒れた赤土の丘に田園都市を造ろうとしました。

しかし、1898年米西戦争でのスペイン敗北で繊維産業は大打撃を受け、その影響でグエルとガウディの田園都市は2棟の住宅が完成した段階で中断することになってしまった。そしてパトロンであるグエルの死後、ここはバルセロナ市に寄付され、グエル公園となりました。

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売れた住宅2棟のうち1棟はガウディが購入、1925年までの約20年間、死の直前までここで生活していました。現在その家はガウディ記念館として公開されています。

 

さて、破砕タイル、岩、樹木がこの公園のキーワード。

公園の入り口を抜けると、緩やかな階段と変化に富んだ色彩のタイルに覆われた壁や彫像が出迎えてくれます。この空間の壁面はどの面もとてもなめらかな、そして複雑な曲面で構成されています。

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中央にはカタルーニャの紋章から首を出す”蛇”、その後には色彩豊かなトカゲが待っている。来訪者をにこやかに迎えてくれる。このトカゲや蛇、そして全体を包む曲面と破砕タイルが作り出す優しい空間が、訪れる人々に安心感を与えてくれのです。

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階段を抜けるとガウディが学生時代から敬意を払っているギリシア建築のドーリスオーダーを模した円柱群が支える空間が現れる。ここは田園都市構想の中で市場に、と考えられた空間。この円柱は上に広がる広場の水はけ用配水管の役目もしている。そしてこの下には巨大な貯水槽があるのです。この時はちょっとさみしく人もまばら、演奏者がひと組音楽奏でるだけ。でもここに市場が開かれているところを想像すると楽しくなる。

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この市場用空間の上には平らな広場があり、その周りを破砕タイルに覆われた有名な波状ベンチが囲っている。この広場からは天気が良ければバルセロナ市街の向こうに地中海が望める。

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ガウディは細部は描かず、設計せずに工事を進め、その都度現場で色々決めるやり方をとった。また自然を活かしながら公園を作り上げていきました。建築資材はこの場所で掘り出された石をそのまま使い、木々があれば道や構造物がそれをよけた。

階段を予定していた場所にあった木を職人が切り倒そうとしたとき、”この木がここまで生長した歳月と、我々が階段の場所を変更するのに要する時間とどちらが長いだろう?”と、ガウディは階段の位置の変更を指示したのでした。これら地中から掘り出され、命を与えられた岩や土が作り出す散歩道の空間はとてもあたたかい。優しい放物線はここを歩く者を優しく包むようだった。ある道は森の木々の下を歩くような、ある道は海の波の中を進むような、そんな空間が続いているのでした。

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高台に建つ一棟の家はガウディの住まいでした。

今ではガウディの記念館となっていて中に入ることができる。この建物はガウディの助手であるベレンゲールが設計したもの。ガウディは老いた父とともにここに移り住み、最晩に年多くの友人や家族を失ったあとサグラダファミリアの礼拝堂に居を移すまで、ここで生活していました。

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波城ベンチを見て、とにかく座って見た。僕は最初、背筋を伸ばしまっすぐに、行儀良く腰掛けてみた。するとどうも腰の辺りにベンチの出っ張りが当たってしまい心地良くない。

おかしいな?と思いつつ、次にずるずるふんぞり返ってみた。するとベンチは僕の体のラインにジャストフィットして何とも心地よい。これが硬いベンチか?と思うくらい優しく体を包んでくれた。今まで座った椅子の中で1、2を争う座り心地に正直驚いた。その時気付いた。このベンチは座るためだけでなく、休むためでもなく、くつろぐために作られたベンチなのだと。

ガウディはこのベンチを造る際、職人の一人を裸にして体の型を取り、それでベンチの形を造った。人間の体にフィットするはずです。

グエル公園に行かれる方がいたら、ぜひこのベンチ、2通りの座り方で試してみてください。

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グエル公園はとても変化に富んでいて、今まで見てきたガウディの建築とも違った空間が出来上がっていた。入り口からの破砕タイルのとても柔らかな空間、そして近代的に再現したギリシアドーリア式円柱が支える市場。その上の波状ベンチに囲まれた地中海を望める広場、岩むき出しの森や波を再現した回廊。。。どれも新しくでもガウディらしい。

グエルの目指したコロニーを思うと今の姿は少し寂しさが感じられるけど、今はバルセロナの公園として市民に愛されているのだから、これも良かったのかもしれない。

 

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