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旅行の記憶と何気ない日常を

イギリス小話 〜オックスフォードの違和感

f:id:fukarinka:20200414121406j:plain僕は初めての海外旅行でイギリスに行った。EU誕生前のこと。

当時従兄弟一家がウェールズカーディフにいたので、僕は大学の夏休みの間、いとこのところへ遊びに行ったのでした。でも、イギリスに入国してカーディフについてから、2日過ごしてすぐに、イギリス縦断の一人旅を敢行したのでした。

今考えると、スマホもない時代に、言葉も喋れず行ったことのない国を一人でまわるとは少々無謀だったかもしれない。けど、行かずにいられない。知らない土地に行くとじっとしていられないのは、あの頃も、今も同じでした。

 

カーディフからまず向かったのは11世紀から続くオックスフォード大学の街。

当時大学生だった僕は世界の名門オックスフォード大学を見てみたかったのだ。

汽車(イギリスは大半が電車でなく汽車だった)に乗り、オックスフォードについたのは夜で、そこから宿を決めて、荷物を置いて、夜の街に出かけた。夜と言っても夏のイギリスは遅くまで明るい。下の写真はその時、やや薄暗い空だけど、日本で言えばもう真っ暗な時間、9時過ぎだったと思う。フラッと入ったリンカーンカレッジの中庭。オックスフォードにはこんなカレッジと呼ばれる大学が39もある。

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自分が通う日本の大学とは随分違う雰囲気にため息つきながら、宿に向かって歩いていたら、突然ものすごいスピードで自転車が突っ込んできた。そう、自転車に轢かれた。ぶつかりはしたのだけど、自転車急ブレーキでギリギリぶつかって、転倒。痛みもないし怪我もない。学生だろうか、小柄な女の子で謎の東洋人に驚いたのか、謝ってあっという間に走り去っていった。海外ひとり旅、初めて日はそれで終わった。

 

次の日、青空広がったオックスフォードの街に出た。

僕はその光景に息を飲んだ。何なんだろう。

昨日は薄暗くてあまり感じなかったのだけど、この時初めて、自分がイギリスにいることを感じた。そこに広がる景色は日本では見ることはない、一つ一つの建物がとても存在感強く、周囲と調和してとても綺麗な、作り物なんじゃないかと思ってしまうくらい整ったい街並みが広がっていた。

何だろう。今思えばヨーロッパの街の普通の景色なのだけど、あの時僕は、例えようもない、違和感を感じていた。街並みがあって、人が行き交って、車や2階建バスが道をいく。何だか、一人で映画館で映画を見ているような、自分の周りだけ別の空気に包まれて別世界にいるような。普段いる自分の世界と、オックスフォードの街があまりに違いすぎて、そのギャップを僕の脳みそが受け入れられなかったんだろうと思う。

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このギャップはこのあとも続いて、オックスフォードにいる間中、違和感を感じながら過ごすことになったのだ。せっかくイギリスにいるのになかなか実感がわかないなんて、もったいない。でも、その違和感がオックスフォードの街と一緒に深く記憶に刻まれることになった。

 

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写真はコドリントン図書館。これが図書館ですから。

何もかもが違った。街も大学も。あの時の違和感は今もはっきり覚えている。オックスフォードにいながら、自分一人が別世界にいるようなあの不思議な感覚。

あとでロンドンに滞在したときくらいに気づいた。僕は建築家になってこういう街を、景色を作りたかったんだ。

 

僕は大学の売店でオックスフォード大学のパーカーを自分のお土産に買った。

今考えるとちょっと恥ずかしいけど、当時はどうしても欲しかったんだな。

 

懐かしい、初めての海外一人旅。違和感と過ごしたオックスフォード。

 

 

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