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ロンドン小話 〜憧れのウィンブルドン

ロンドンでどうしても行きたい場所があった。それはウィンブルドン

イギリスはテニス発祥の国。

ウィンブルドンは1877年から続くグランドスラム大会The championships Wimbledon(いわゆる全英オープン)の開催地。そこは4大大会の中で唯一天然芝のコートで行われ、試合も練習も白いウェアの着用が義務付けられ、伝統と格式を重んじるテニスの聖地。

そしてウィンブルドンセンターコートは1年のうちこの大会が開催される2週間だけ使用され、残りのほぼ一年はこの2週間のためだけにひたすら芝の静養をするというなんとも贅沢な扱われ方。テニスの世界でWinbledon(ウィンブルドン)という場所は他の4大大会と比べても特別な位置にあるのです。

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僕とテニスの関係は小学生の頃に始まる。スウェーデン人のビヨン・ボルグがウィンブルドン 4連覇を果たした優勝の瞬間、両膝を折って、両手を高く突き上げる歓喜の瞬間は今でもはっきり覚えている。その時、僕はウィンブルドンの名前を覚えた。

僕は小学生の時に少年野球チームに入った。その時、ピッチャーに起用されたけど、期待に応えられたかった時の大人たちの途轍もない冷たさや、チームメイトに足を引っ張られて負ける時の悔しさとか、自分のせいでみんなが負ける時のもどかしさから「もうチームスポーツは十分」と、中学に入りテニス部に入った。ボルグのウィンブルドン優勝に影響されて、テニスの面白さにはまり、一生懸命練習した。目指すはウィンブルドン

時代は移り変わって、悪童ジョン・マッケンローと無冠の帝王イワン・レンドル、ジミーコナーズがテニス界を席巻していた。中学での自分のテニスは面白いように上達していき、本当にウィンブルドン行けるんじゃないか?と錯覚できた頃もあったほど。

高校に入り、1年生の時から同級生を尻目に先輩方との練習に入れてもらった頃、ボリス・ベッカーが最年少でウィンブルドンチャンピオンになり、エドバーグ、アガシ、マイケルチャンが世界で活躍していた。そんな頃に僕は挫折を味わう。誰にも教わらずに突き進んだ「自己流」が行き過ぎ、コツコツと地道に基礎を固めてきた同級生に抜かれてしまった。僕はウサギとカメのウサギだった。それ以降、テニスに興味をなくしてしまい真剣勝負は極端に避けるようになった。

大学に入って、テニスは続けたものの、適当に楽しむ程度にとどめていた。でも今思えば、その中途半端な状態が、かえってストレスとなってしまいテニスを楽しめないものにしてしまったように思う。

 

僕がウィンブルドンを訪ねたのは、ちょうどそんな頃だった。

テニスに対してとても中途半端な時期だったけど、憧れて一生懸命打ち込んだテニス、その聖地はどうしても見ておきたかった。ここにきてセンターコートを見ることで何かが変わるような変な期待もあったように思う。

ウィンブルドンには博物館があり、そこからセンターコートを見ることができるはずだった。でもその時、ウィンブルドンの大会直後で芝の改修工事中のためセンターコートを見ることはできなかった。

自分の中途半端な気持ちにウィンブルドンがNOを突きつけてきたような気がした。

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高校の時の挫折の思いとその後のテニスとの中途半端な関わりも続かなくなり、社会人になってからはテニスをやめ、長いことテニスを見るのも避けていた。

僕自身のテニスは止まってしまったけど、その後もテニス界は変化・進化を続けている。世界のトップランカーもめまぐるしく変化して、日本人も松岡修造がウィンブルドンでベスト8に入り、伊達公子が世界4位になり、最近では錦織がランキングTOP10の常連となった。すごいことだ。僕がテニスをやっていた頃は、死ぬまでに日本人男子プレーヤーのTOP10入りなんてないと思っていた。そしたら、2018年大坂なおみがUSオープンで優勝してしまった。そんな日本人選手の大快挙と、自分自身時間が経ってようやく客観的に過去の自分を眺められるようになった最近、またテニスを見ることができるようになった。

この4半世紀の間、僕は3回くらいテニスをした。一番最近は、昨年。小学生の子供たちと、テニスというか、テニスコートでボールを追いかけて走り回った感じだったけど、そこで思ったのは、今まで色々な草スポーツをやってきたけど、やはりテニスコートの上が自分の居場所として一番しっくりくるように感じて、なんだか嬉しかった。

 

今、昔を振り返ってみて、高校生の時のあの挫折は僕の人生には必要だったと感じている。あれがなかったらロクな大人になれなかったように思うのと、あのおかげで色々な世界が開けていったのだから。

今でもまだテニスを見ると辛い気持ちになることもあるけど、最近テニスを復活したい気持ちが湧いてきている。

そして、もう一度ウィンブルドンに行ってセンターコートを見なければ。

 

 

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