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パリ オペラ座界隈〜マドレーヌ寺院

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マドレーヌ寺院(Église de la Madeleine)

この古代ギリシア風のコリント様式の神殿は、聖マドレーヌ(マグダラのマリア)を守護聖人とするカトリックの教会です。この外観はとても教会には見えません。

コンコルド広場からもこの現代に蘇ったコリント式神殿を眺めることができます。

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ナポレオン(1世)はパリを古代ローマに匹敵するような壮麗な都市にしようと、最初に2つの凱旋門の建設を命じます、そして次に作らせたのが現在マドレーヌ寺院となっているこの神殿でした。

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元々ここにはマドレーヌ教会を建てる計画がありました。1764年にルイ15世によって、この場所に聖マドレーヌに捧げる教会の建設が始まりますが、1789年のフランス革命によって基礎工事までで工事は中断されます。その後、ナポレオンによって1807年に工事が再開されることになります。この時はパリの街を古代ローマのようにしたかったナポレオンの意思によってこの場所には教会ではなく「フランス軍を讃える神殿」、古代ローマ(ギリシア)神殿風のデザインで建設が進められるのでした。

その後ナポレオンが失脚したため工事は中断、未完成となっていたこの神殿でしたが、元々の用途である「聖マドレーヌにささげる聖堂」として工事が再開され1842年に完成しました。

この時期のフランスを象徴するようなマドレーヌ寺院誕生の物語です。

デザインはギリシア神殿風の建物をそのまま使用することとなったため、十字架も鐘楼もない世にも不思議な珍しい教会となりました。

 

 

 マドレーヌ寺院は古代ローマの、というよりどちらかと言えば古代ギリシアの、コリント式神殿をお手本にした建築です。サイズ的には縦108m、横43m、周囲を52本のコリント式円柱が囲む構成で、これはアテネパルテノン神殿を遥かにしのぐ大きさ。凱旋門といいマドレーヌ寺院といいナポレオンらしいサイズです。

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正面破風には古代ギリシア風ではあるけれど「最後の審判」のレリーフ

他にも入り口となる銅製の扉には「十戒」のレリーフが施され、円柱の内側の壁面にキリスト教の聖人の像が配置されていることで、微かにではあるけれど教会の雰囲気を醸し出している。

 

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僕は一度だけ、マドレーヌ寺院の内部に入ったことがある。当時は外と同じくギリシア神殿風の作りになっていることを期待して中を覗いてみた。すると中は意外なほどしっかりカトリック教会風になっていて、外とのあまりのギャップに驚いた(がっかりした)のを覚えています。

 

僕はギリシアやローマの歴史や建築が好きで、神殿の完成したままの姿を見たいと常々思っている。

今まで神殿の「遺跡」はたくさん見てきた。でも遺跡なので、当然のことながら廃墟であるので、往時の姿は頭の中で創造補完するしかない。それでも現在見られる崩れていない神殿もわずかに存在する。ローマのフォロ・ボアリオにあるヘラクレス神殿とポルトゥルヌス神殿(これらは亜流だし小さい)と、南フランスはニーム にあるメゾン・カレ(これは古代ローマ期の主流と言って良いけど、小さい)がほぼ当時のままの姿を保ってるが、僕の欲求は満たされない。

 

*こちらで少しメゾンカレが登場します

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ギリシア神殿を部分的に模した建物は後世たくさん作られたけど、そのままを見ることはほとんどできない。僕の「完成品」を見たいという欲望は、本場のローマに行っても、ギリシアに行っても中々満たされることはないのです。

その中々満たされない欲求をだいぶ満たしてくれるのが、このマドレーヌ寺院。ちょっと大きすぎる嫌いはあるけれど、ほぼギリシアのコリント式神殿の外観は僕の欲求不満の大部分を吸収してくれるのです。

 

 

近所のオペラ座の豪奢なデザインと違い、整然と円柱が並ぶシンプルなフォルムは対照的ではあるけれど、ギリシアの神殿建築とは「美しく見えるように」考えられているので、パリの街中にあってもその存在感はとても大きい。

 

僕にとってのマドレーヌ寺院は、マグダラのマリアの教会であること以上に、古代ギリシア神殿の往時の姿を見ることができる貴重な建物。ギリシアで生まれた神殿建築はその完成度の高さから、ローマに受け継がれ、近現代にも世界各地にその影響は色こく残ります。

本当なら古代の神殿は廃墟で崩れたまま。ここにくればパルテノンを凌ぐ大きさでギリシアの神殿を眺めることができるという、僕にとってはそういう場所です。

 

 

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