cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

パリ小話 オルセー閉館間際の至福

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僕は2018年に約20年ぶりにオルセーを訪ねた。そんな20年ぶりに行ったので、ゆっくりじっくりとオルセーを堪能したかったのだけど、その時はなんと入場受付締め切り直前、僕たちの後ろ一組が「本日最後の入場者」という状態でした。

 

「近年のパリは」、「この時期のパリは」なのかわからなかったけど、とにかくパリはものすごい人だった。ルーブルといい、オルセーといい以前はこれほどまでには混雑してなかったと記憶するのだけど。。。。

大混雑の入り口を抜けると、一目散に3階の印象派ギャラリーへ向かいます。本当はもっとゆっくりオルセー全体を巡りたいところなのだけど、閉館時間が迫っているのでまあ仕方ない。

この年はベルギーに住む姉と甥、おばあちゃんとうちの家族4人の3家族3世代でのパリ。

人混みの中、みんなをぞろぞろ引き連れて、最上階の印象派ギャラリーに到着。当時小学生の娘たちにホンモノを見せようと、自分の好きな画家の前に連れてっては「これはね。。」と軽く解説。本人たちの記憶にはほとんど残ってないみたいけど、いつかあの時パリに行ってオルセーでたくさん絵を見たことを思い出して、その価値をわかってくれる日がくるといいなあと思う。

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パリの美術館なのに、東京での美術展のようなこの人混みに「なぜ??」と思いながら珠玉のコレクションを堪能していると、ついにその時が来てしまった。

閉館です。と館内放送が流れる。

出口へ向かう人並みをよそに、僕はぼーっと絵を見ていたら、気づくと周りにはほとんど人がいなくなった。

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さっきまで人だかりだった、名画たちがまるで自分専用の状態になった。

ルノワールムーラン・ド・ラ・ギャレット、マネの草の上の昼食、モネのルーアン大聖堂や日傘をさす女、ドガセザンヌ。。。。まるで貸し切り。滑り込みで入場して、時間なく、さらに今までにない人混みに「これじゃ東京と同じじゃないか」と半ばふてくされていた自分にこんな至福の時間が来ようとは。。。。偶然訪れた幸運。

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*ラトゥールの絵も何も遮ることもなく、喧騒に邪魔されることなく眺められる。

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とは言っても、至福の時間はそれほど長くは続かなかった。まるで終電の駅で電車内の酔っ払いを追い出すのと同じように係員がやってきた。「閉館でーす、早く出てってー」と容赦ない。

仕方なく追い払われるように、でも余韻に浸りながら人のいない印象派ギャラリーを抜けて地上のホールに降りると、これまた今まで見たことのない誰もいないオルセーのグランドギャラリーが。閉館間際にこんな時間が訪れるとは、いままでまるで想像したことなかった。

 

閉館間際に、偶然にもとてもよい思いができたかなりの満足感と、娘たちに見るべきものを見せた自己満足に浸っていたのだけど、オルセーを出た後、何か忘れ物をしたようなそんな感情が湧いてきた。

それは、以前は印象派ギャラリーと一緒に並んでいた後期印象派の絵がなかったことに気がついた。つまり大好きなゴッホの作品を見逃してしまった。後で知ったのだけど、最近になって後期印象派はひとつ下の階に移っていたのでした。

偶然の幸運もあれば、こんながっかりもあり。とはいえ今回ゴッホを見逃したこと以上に、誰もいない印象派ギャラリーを体験できた価値はあったと今でも思ってる。

 

 

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