cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

モンマルトル テルトル広場周辺

f:id:fukarinka:20201129201710j:plainテルトル広場(Place du Tertre)は旧モンマルトル村の中心で、以前は村役場もあった場所。今は小さな広場にカフェがひしめき、その周りは画家や似顔絵描きの店で囲われます。現在ここは昼夜を問わず大勢の人でにぎわうパリ観光の目玉の一つです。

150年ほど前、市街化が進むパリの中心とは対照的にここは変わらず昔ながらの風景と空気をたもっていました。家賃も安上がりなモンマルトルは、いつの間にか貧乏だが情熱あふれる芸術家が多く集まる丘となっていたのでした。

 

f:id:fukarinka:20201128211256j:plain

 

またこの頃、まだパリ市の外側に区分されていたこの一帯は、酒税がかからず「安く酒を飲める場所」として急速に歓楽街へと変貌していました。画家が描いた、耳に馴染みのある名前「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」はダンスホール、「ムーラン・ルージュ」、「ル・ディヴァン・ジャポネ」はキャバレー、「ラパン・アジル」はシャンソン酒場。画家たちにとって、この頃すでに少なくなった昔ながらの「絵になる風景」と貧しくても逞しい庶民の生活、華やかな芸能の世界と題材には事欠かくことはなかったでしょう。

f:id:fukarinka:20201128211438j:plain

 

ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)、ロートレック(Henri Marie Raymond de Toulouse-Lautrec-Monfa)、ドガ(Edgar Degas)、ピサロ(Camille Pissarro)、モディリアーニ(Amedeo Clemente Modigliani)、マティス(Henri Matisse)といった画家たちがモンマルトルでアトリエを構え、ユトリロ(Maurice Utrillo)がモンマルトルの素朴な日常風景をたくさん描きました。そしてオランダからゴッホ(Vincent Willem van Gogh)が、スペインからピカソ(Pablo Picasso)がやって来てこの周辺にアトリエを構えるのでした。

f:id:fukarinka:20201128211349j:plain

 

 f:id:fukarinka:20201128211534j:plain

モンマルトルの素朴で自由で華やかで、そして安上がりな環境は、芸術家だけでなく詩人、劇作家、小説家など多くの文化人も引き寄せ、数十年の間、パリを代表する文化芸術が育まれることになります。

f:id:fukarinka:20201128211514j:plain

 

第一次大戦後、モンマルトルは急速に観光地化が進み、人混みと地価の高騰が押し寄せます。それを嫌った貧乏で情熱を持った文化人はセーヌ左岸のモンパルナス地区へと移っていき、文化芸術の生まれる場所もモンパルナスへと移ります。でも短い期間でもモンマルトルで過ごした画家たちのその後の活躍はここモンマルトルという場所が特別だったことを証明しているのかもしれません。

 

いまでもモンマルトルは一大観光地で昼夜問わず、人が絶えません。観光政策によるところも大きいと思うのだけど、画家たちが去って100年ほどたった今でも、モンマルトルのテルトル広場の周囲は画家たちが過ごしたころの雰囲気を残し(あるいは再現して)フランス近代芸術の育まれる場所、と思わせてくれるのです。

 

 

cmn.hatenablog.com
cmn.hatenablog.com