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ヴェローナ 古代ローマ円形闘技場

f:id:fukarinka:20210530175121j:plain円形闘技場 (Arena di Verona)

ヴェローナがローマ都市として栄えた紀元1世紀前半に作られた、25000人収容の円形闘技場。完成時期ははっきりした記録がないようだけど、ローマのコロッセオより数十年はやく完成したと言われています。この頃からローマ帝国各地に円形闘技場の建設が始まり、この円形闘技場はローマ都市には欠かせないインフラのひとつとなっていくのです。

各地の円形闘技場と同じくローマ帝政期には剣闘士同士の戦いや剣闘士と猛獣の戦いなどが催された一方で、他の街の闘技場で行われた初期のキリスト教徒弾圧に伴う公開処刑は、このヴェローナ円形闘技場では行われた記録がないそうです。

ローマが去った後、中世には放置荒廃したものの、16世紀になると再び活用され始めます。貴族の騎馬競技大会、大道芸の舞台、気球のイベントなど。。。

 

*野外オペラへ

18世紀にバレエの講演が行われたり、19世紀にはロッシーニヴェローナで開催された国際会議の余興として演奏するなど徐々に音楽堂としても利用されるようになります。

実際この円形闘技場古代ギリシアに始まる半円形劇場は、舞台の演者の息遣いが遠く最上階まで聞こえてくるほど音響効果が素晴らしいといいます。実際にギリシアや南フランスに残っている円形闘技場や半円形劇場い行った時、舞台で手を叩いたり、「わっ」と声を発してみるとその響き方がすごかった。

 また古代ローマの建造物は視覚的に壮大なオペラの舞台装置としても効果が素晴らしく、2000年の歴史と現代のセットを合わせた演出効果に気づいたオペラ関係者が、オペラと円形闘技場の組み合わせを企画して、1913年のヴェルディの生誕100周年に野外オペラ・フェスティバルをこの円形闘技場で初めて開催します。初演はヴェルディの「アイーダ」が選ばれました。

こうして古代円形闘技場での野外オペラは始まり、ヴェローナは夏の野外オペラの街として有名になります。

2度の世界大戦時に中断はあったものの、以降100年以上この野外オペラは現在まで続いているのです。

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*2000年後の闘技場で

僕がヴェローナに着いた時は第74回目のフェスティバルの期間真最中で、円形闘技場があるブラ広場と闘技場の中は、その準備が進められていました。下の写真、黒い舞台が作られオーケストラピットも見えます。アリーナに椅子が敷き詰められ、闘技場の観客席も途中まで椅子が置かれている。

その上の層は闘技場の席そのままで、2000年前と同じく、聴衆は石の上に腰掛けオペラを観るのです(僕は椅子よりこっちの方がいいな)。

丁度、このとき1913年の第一回の演目と同じヴェルディの「アイーダ」の準備中で、舞台にはオベリスクが建てられ、闘技場外にはスフィンクスの大道具など、アイーダの大小たくさんのセットが搬入をまっていた。普段のヴェローナは知らないけれど、なんだかこの世と思えないようなとても異質な空間に紛れ込んだような、そんな感じでした。

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円形闘技場は、オペラの劇場として使われるくらい全体的には保存状態がよく、さまざまなイベントにかれこれ2000年もの間使用され続ける、さすがローマのインフラです。

いまの外観は2層アーチですが、建設当時は3層でした。

ヴェローナで買った絵葉書

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建設から1000年その姿を保ちましたが、1117年にヴェローナを襲った大地震によって、一番外側の3層アーチの外壁のほとんどを失い、今のような2層アーチ構造っぽい外観になりました。

建設当時の3層構造の名残は下の写真の場所に一部残っています。全体の5%くらいの範囲ですが、残っています。

たしかに横から見ると地震には耐えられそうもない。。。

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古代ローマのインフラは外観的な美しさと耐久性が両立していて、各地にのこるローマの遺跡は単なる観光資源としてだけでなく、この円形闘技場のようにオペラ劇場として使われたり、現役の橋として使われたり、ローマ時代の道のをそのまま現在の道路に使用したりというものがとても多い。ローマ人の技術力と美的感覚の質の高さには憧れるばかりです。

 

ミラノへ列車で出会ったオペラ団はどこにいるのだろう。小さな街なので、フラッと再開できそうかと思ったけど、ちょうど野外オペラフェスの真っ最中ということで人が多くてちょっと無理でした。

円形闘技場の最上部、わずかに残された3層部分の向こうに、時計塔が見えます。

これからあそこへ行ってみます。 

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