ドゥオモ広場(P.za del Duomo)
「なんてきれいなところだろう・・」
斜塔を目当てに訪ねたドゥオモ広場だったのだけど、初めてこの広場に足を踏み入れた瞬間、緑の芝生に白い建物が点在するこの空間の虜になってしまいました。
ピサ・ロマネスク様式の粋と、どういうわけか傾いてしまった鐘楼がこの空間をより「奇跡の広場(Piazza dei Miracoli)」にしているのです。
広場の西側、聖マリア門から広場に入ります。
この奇跡の広場は4つの建物からなります。
手前の洗礼堂、ドゥオモ、鐘塔(斜塔)、そして左手の納骨堂。この建物群の様式はピサ・ロマネスクとよばれ、白大理石と円柱のリズムが、そして緑の芝と大理石の白の調和と建物のリズムがとても心地よいのです。
ここでふと気づくのです。この空間はヨーロッパの広場の中では異質。ふつう広場は街の中に溶け込むようにあり、聖堂や鐘楼も街と同化するように存在するのです。ピサのドゥオモ広場は街とは隔離する形で空間を区切って確保して、その中に重要な建物をバランスよく配置する。これは日本の法隆寺に通じるものがあって、僕が何か強く惹かれる理由はそこにあったのかもしれません。
■聖ヨハネ洗礼堂(Battistero di San Giovanni di Pisa)
1152年に建設が始まり完成は1353年。工期が200年その間、建築家が代わったこともあって1層目はロマネスク様式、2層目以上はゴシック様式で作られています。
中は音響効果がすばらしいと言われています。中に入ったとき、たまたま修道士の雰囲気のある男性(ドゥオモの人だと思う)が聖歌を歌うようにその響きを実演してくれた。
確かにすばらしかった。響きもその人の声も。
ちなみに左手奥の白いシンプルな建物は納骨堂。
■ドゥオモ(Duomo)
ピサ海軍がシチリアのパレルモ沖でサラセン艦隊(イスラム教徒)との戦いに勝利したのをきっかけに、1068年にドゥオモの建設が始められました。ピサのドゥオモはイタリアにおけるロマネスク建築の最高傑作とされ、その様式は「ピサ・ロマネスク様式」と呼ばれます。
バランスの取れたフォルムに細身の円柱とアーチが4層に構成されたファサードが背後に見える鐘楼と共にとてもこの空間に映えます。
1068年から50年の歳月をかけてつくられた。この時代、50年で完成はかなり早いと思う。
内部空間がまた秀逸です。
海運国であり、東方貿易も盛んだったピサらしく様々な様式が調和のうちに入り乱れ、強烈なオリジナリティを示しているのです。
後陣主祭壇、ラテン十字の交点のあたりは、ビザンチン様式の影響が強くみられます。半円ドームによる空間、モザイク画といったビザンチンの特徴にロマネスク様式が融合しています。
身廊を支える柱はパレルモの古代ローマ神殿にあったという68本のコリント式円柱、白黒色大理石によるストライプ上の装飾はトスカーナの特徴、尖塔アーチはイスラムの様式、ロンバルディアのブラインドアーケード、そしてバシリカ様式に通じるロマネスクの格子天井。本当にいろいろな様式が混ざり合って、でも調和を守って融合しているところがすごいです。
ピサ・ロマネスク様式の建築が調和のもとに配置された広場としてだけでも、十分すばらしい空間なのですが、この広場を「奇跡」と言われるまでになったのは、鐘楼「斜塔」の存在によります。
次は「奇跡の斜塔」をみていきます。