cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

ローマ小話 ローマへ

アリタリア航空でミラノを経由してローマにはいると、フィウミチーノ空港に到着するのは夜の8時頃。そこから入国手続きをしてから電車でローマのテルミニ駅へ向かうともう外は真っ暗です。

空港からローマ市街の中心まで約30分ほどの電車の旅になるのだけど、車窓の景色はほぼ真っ暗。でもローマの街に近づくにつれ、徐々に街灯が増えてくる。淡いオレンジに照らされる街に時々遺跡が淡く映える。すると突然、古い城壁と小さく鋭角な白っぽいピラミッドが現れる。これは紀元前18年に建てられたガイウス・ケスティウスのピラミッド(お墓だそうだ)。僕はこれを見ると「ローマについた」と実感するのです。

徐々に列車は速度を落としそして駅に近づくと今度は紀元前4世紀に建てられたセルウィリウスの城壁が迎えてくれます。列車は止まり、荷物を担いでドアに向かいます。そしてドアが開く時、魂込めてローマへの一歩を踏み出す。これは僕にとって何度行っても感慨深い儀式です。

ローマの空港を出発してテルミニ駅につくのはだいたい10時。だから日本からローマ入りするするときはテルミニ駅のそばにホテルを取ります。

この年、夜のテルミニ駅を出て予約しておいた共和国広場のそばの宿に向かいます。

 

ローマに着いた満足感とともに夜の駅前を歩くと、初めて一人でローマに来たときのことを思い出します。

それまでイタリアは危険だとさんざん聞かされていた僕は、過剰なほど緊張感を高めてローマ入りするのでした。そのときの気分はさながら命をねらわれる国際エージェント。かなり頭でっかちになってテルミニ駅から歩いて3分のホテルまで、夜遅くであることも加えて、僕は目に入る人はすべて「悪者」に見え、全神経を研ぎ澄ましホテルまで歩くのでした。その道すがらショーウィンドウがあれば尾行してくる者がいないかチェックを怠らず、さらにホテルについても不信な侵入者が入って来ないか周囲の警戒は怠らない。襲撃に対しての防御は脳内シミュレーションで完璧。ローマに着いたはいいけれど、ローマに来た期待感や満足感よりも、命狙われることなく無事ホテルについたことで安心したものの、なんだか変なスタートになってしまったことを覚えています。実際のところローマで危ない目にあったことは一度もない。海外では用心は必要なんだけど、今からすればどう考えても過剰だったと思う。

 

3度目のローマ。このときも夜10時過ぎにローマ到着。この日は天候がとても不安定で、道やテルミニ駅の横の遺跡、街中がすでに雨にぬれていた。

サンタ・マリア・マッジョーレ教会の近く、暗い路地にあるホテルに到着してチェックインをすませ、部屋に入る。部屋は壁も床も石で囲まれていて広いのだけど埃っぽい。部屋中にひんやりした空気が充満していてちょっと落ち着かない。この部屋にしてあの値段か・・・大都市ローマなだけに仕方ないかと思っていたら、まもなく大粒の雨音が窓の外から聞こえてきた。

明日は夜明け前から歩き始めるつもりの僕は、夜も遅いしとベッドにはいる。丁度その頃、雨音がいっそう激しくなってきた。それは「やかましい!」と感じるほどの雨音を立てて轟々と唸るような雨がローマの街に降り注いでいる。それでも僕は寝ようと試みた。

そしてようやく、なんとなくウトウトし出した頃、もう間も無く意識不明と思ったら今度はカミナリが鳴りだした。時差ぼけの頭がこれに反応し、一気に目が覚めてしまった。それでも僕は時差ぼけ対策のために無理にでも寝なければと、眠る努力をするのだけど、再びウトウトくると雨の轟音と、それを切り裂くようなカミナリの音が眠りから僕を引き戻す。

そんなことの繰り返しで、時計を見たら2時だった、次に見たのが3時、4時、5時、5時半・・ほとんど1時間おきに時計を眺める。そして、時計を見る感覚が短くなっていく。。。そしてとうとう6時になって僕は一睡もすることなくムクっとベッドから起き上がり、外へ出る支度を始めたのでした。

気がつくと雨音はすっかり消えて、外は静まりかえっていた。時折カミナリの音が遠くに聞こえる。

6時半。あたりはまだ真っ暗。ホテルを出るとひんやりした空気が時差ぼけと寝不足の頭を刺激してくれた。

道は雨に濡れ、空は雲に覆われる。強い風が木々をゆらし、空の雲を動かす。

 

テルミニ駅の上のほうではまだカミナリがぴかぴか光っている。僕は駅前の遺跡を眺めた後、一晩中ライトに照らされるクィリナーレ宮殿で遠く朝もやにかすむバチカンのサンピエトロ大聖堂を望み、朝の掃除で水の無いトレヴィの泉を眺め、そしてフォロロマーノを目指し歩き始めた。途中、日が昇り、明るくなった空を見上げると虹が架かっていた。

ローマ中を歩き回る、波乱の1日の始まりです。

 

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