
先日「ベルギー人がヨーロッパ一の怠け者である」という話題を紹介しました。これはヨーロッパでは事実のようによく言われ、実際にベルギーに在住の姉や姪甥も、「ヨーロッパ怠け者No.1はベルギー」というのはものすごく同感するらしい。
僕がヨーロッパへよく出かけた頃はヨーロッパいちの怠け者は「ギリシアだろう」という意見もあり、実際にギリシアへ行くと妙にその説に納得してしまう出来事も多々あった。ちょうどその頃、ベルギーの国営航空サベナ・ベルギー航空が経営破綻したり、ギリシアの国営航空のオリンピック航空は日本への運行停止(一説にはのんびりしすぎて成田就航が認められなくなったという噂も)となったりして共に国営航空に起こった出来事と、ヨーロッパいちの怠け者説とが僕の中でリンクしてしまい、僕の中でも怠け者国家に認定されてしまった。確かに僕が出かけた国々の中で怠け者No.1の称号がベルギーかギリシアと言われれば、妙に納得する出来事が多かった。怠け者説との関係があるかは分からないけど、当時、特にギリシアは経済状況がとても苦しく、EUのお荷物的な存在だったと思う。
ところが、
最近見たイギリスのエコノミスト誌の記事でヨーロッパ地域35ヶ国中トップの経済大国がギリシアであると報じられていたのを見ました。アメリカのCNNは「長く曲がりくねった道の果てにたどり着いたギリシアの快進撃」とコメントしているのもみた。なんということだ!!
確かにギリシアは古代ギリシアの偉人と遺跡と、美しいエーゲ海とその島々という、歴史的かつ自然のこの上なく貴重な財産を多く持っていて、以前から観光立国ではあったし、僕は当時からほんの少し頑張ればたくさんの利益が出せるだろうにと感じていた。でも、多分ギリシア人たちはお金持ちになりたいとか、そういう願望はなかったんだろう。お金かせがなくたって、人類の遺産と呼べる遺跡がそこらじゅうにあるし、果てしなく美しい海や島々もある。別にお金なくても十分豊かに暮らせるんだもの、あくせく働く方がおかしく思えるんだろうなと感じていました。
そう、僕が知っているギリシアという国は、その過去の輝かしい遺産に寄りかかるだけの国というイメージだったのだけど、それが今やヨーロッパトップの経済大国だというから、僕はその記事を見たときに文字通り自分の目を疑いました。何をきっかけにギリシア人は金儲けに目覚めたのだろうかと。
僕がよくヨーロッパに出掛けていた頃、現地でこんな絵葉書を買いました。
「完璧なヨーロッパ人はこうあるべき。。。」というタイトル。
例えば、「料理はイギリス人のように(マズく)」「運転はフランス人のように(過激で)」「ドイツ人のようにユーモア(がなく)」で「ベルギー人のようによく働らかず」「オーストリア人のように我慢強く(なく)」「イタリア人のように自己制御(できない)」。。。とつづきます。世間で言われている各国人の特徴を皮肉って、これが全部揃ったら、あなたは完璧なヨーロッパ人ですというわけです。本当にそんな人がいたらエライことになります。

ギリシア人はと言えば、「ギリシア人のように組織的に。。」とあり、髭生やした男性が倒れ込んでくる書類棚の前でイキリ立って電話している。その後ろには売上がダダ下りのグラフ。つまり組織だって行動できずビジネスがだめなのがギリシア人の特徴というわけです。25年も前の話になるのだけど、当時ギリシアの国営航空であるオリンピック航空が日本の就航を取りやめた。本当かどうかわからないけど当時日本側が断ったという噂で、その理由はギリシア人はあまりにもルーズで、組織的な行動ができず、オリンピック航空もまったく時間通りに運行しないというのが理由だったと実しやかに囁かれたほど。流石にそんなことはないだろうと思って実際ギリシアを訪れると、そんなギリシア人のルーズさが随所に感じられ、日本がオリンピック航空の就航を断るのも無理ないと当時思ってしまったのをよく覚えている。そしてこれでは確かに経済が良くなるはずもないなと、妙に納得したのでした。
僕は経済大国日本から経済が軒並み厳しいと言われていたヨーロッパを旅した時、経済がよくない国はきっとみんな、不安と不満を抱えて生活している陰鬱さが感じられるんだろうと思っていた。しかし、実際に出かけてみると、全くそんなことはなかった。イタリアに代表されるように貧しいはずなんだけど、明るい。お金はないけど人生を楽しんでいる、お金はなくても豊かに暮らせる、それがヨーロッパの国々に大体において感じられる「雰囲気」だった。その中で、なんだかギリシアだけは違う印象をもったのでした。当時イメージしていたヨーロッパの国、経済が低迷してなんか暗く陰鬱なイメージが当時のギリシアにだけは当てはまったのでした。
なんか、がんばらない。なんか、何かのせいにして何もしない。当時の勝手なイメージですが、僕が感じたギリシア人はそんな感じだったのです(こういう人、身近に結構いますけどね)。
当時の通貨ドラクマの硬貨に刻まれた、古代ギリシアの偉人たちを見るにつけ、「過去の遺産にあぐらをかくギリシア人」という悪い印象ばかりが残ったのでした。もちろん古代ギリシアの溢れるほどの歴史、遺産、エーゲ海の美しさとそこに浮かぶ島々に浸って、お釣りが来るくらい感動したし、堪能しました。でもギリシアの人々にはちょっと残念な思いをもった、というのが僕のギリシア感でした。

まあ、地下鉄通そうとすると古代ギリシアの遺跡が出てきて、発掘調査がはじまり一向に工事が進まない。人類の遺産があまりに多くあるために、近代的に生まれ変わりたいと市民が望んでもままならない、という面に関しては同情するのだけど、もうちょっと頑張んなさいよ、と思った次第。
あれからもう25年、この記事を見つけた僕は驚愕したのです。ついに、あれだけの観光資源を活かし経済発展を遂げ、経済大国として認識されたギリシア。嘘のようです。きっとペリクレスのような政治指導者が現れたのかもしれませんね。
昔ギリシアのアテネを訪れた時、休止中の地下鉄工事現場があった。工事してたら遺跡が出てきてしまって、調査が終わるまで工事は中断するんだとか。多分工事再開は10年後か20年後か。。。。と言われていたのだけど、秋篠宮佳子様のギリシア訪問のニュースの中で、地下鉄が開通したと報じられていて、25年の時をかけてついにあの地下鉄が開通したと思うと、なんとも感慨深いものでした。
実は目に留まった記事は、ギリシアと日本のオーバーツーリズムに焦点を当てていた。思えば日本もこの二十年ほどの間に大きく観光ビジネスが変化しました。日本に眠っていた観光資源をより魅力的にアピールすることで多くの外国人を招き入れることに成功しました。ギリシアと日本に共通する弊害は、あまりに多くの観光客が押し寄せるために遺跡や遺産にダメージが与えられてしまうこと、またある確率で存在する迷惑な観光客が増えてしまったことを論じていました。そんな記事を見ながら僕は、勤勉な日本人と堕落していたギリシア人、行き着く先が同じだったというのは皮肉だけどとても面白いな、と思ったのでした。

25年前のヨーロッパ怠け者TWO TOPだった、ベルギー人とギリシア人。ギリシア人は「トップ怠け者」を返上したばかりか、ヨーロッパいちの経済大国となったようだ。昨年まではベルギー在住35年の姉の話を聞く限り、ベルギー人はあまり変化はなさそうだから、ついに怠け者ONE TOPか?と思っていたら、先日日本に来たベルギー在住の甥っ子が、若くてとても有能な人が総理大臣になったと、興奮気味に話してくれた。「あの人はベルギーを変えてくれる」と。これでもしかするとヨーロッパの怠け者構図が大きく変わるかもしれない。時代は移り変わり、人も国も変化する。でも変わらないことも価値だと思うのだけどね。