
サン・ピエトロ大聖堂に入るとすぐ、神々しい彫刻に出会うことができます。

ミケランジェロ25歳(1500年)の作品。
バロック美術あふれる聖堂内にあって、この作品は異次元の光を放っています。このピエタの前に立つと堂内の喧騒も、時間のたつのも何もかも忘れてしまいます。
「ピエタ(慈悲、哀れみ)」とは磔刑で息を引き取ったイエスを聖母マリアが抱く場面で、多くの芸術家がピエタを主題に作品を残しています。その中でもおそらく最も有名で感動的なのがこのミケランジェロのピエタ。
これが25歳の若者によって作られたというのは、、いや芸術というものは年齢ではありませんね。「神の如きミケランジェロ」は何歳であるかなどの議論は全く意味をなさない(詳しくはミケランジェロを語るときに。。)。神に愛された者にだけ許される、それこそ神に与えられた才能のなせる業なのでしょう。。。

身廊に入ると一気に広大な内部空間が広がります。
大理石がふんだんに使われる内部は豪華絢爛、そして巨大な空間にはただ呆然と見上げるばかり。この時は朝一番に中に入ったので、奇跡のように静かで人がまばらです。

堂内には6万人が収容可能で11の礼拝堂と42の祭壇がある。広さ、高さ、クーポラの規模などどれをとっても聖堂建築として世界最大です。写真に映る人間の大きさを見ると、この聖堂がどれだけ大きいかがわかります。

十字の中央に位置するミケランジェロのクーポラの天井。高さ132.5mの先には天使に囲まれた神の姿が描かれています。

そしてそのクーポラの下には、主祭壇を覆う高さ29mもの大天蓋が聳えます。ベルニーニによって1633年に完成した大天蓋は、特徴的にねじれる4本の柱には月桂樹やオリーブの葉が絡みつき、その上には教皇の象徴とされる冠や鍵や剣、そして聖書を持つ天使の像が立ちます。

そして大聖堂の奥、後陣には聖ペテロの司教座があり、こちらもベルニーニによって作られた。ここには聖ペテロが使ったと伝承された木製の椅子が据えられました。

ベルニーニの大天蓋を取り囲むように、4体の彫像が立っています。ミケランジェロのクーポラを支える4本の柱に立つ4体の彫像は聖遺物を持って大天蓋に向き合っています。ヴァチカンが持つ4つの聖遺物とは、イエスの顔が写った「ヴェロニカのヴェール」、イエスの脇腹をついた「ロンギヌスの槍」、コンスタンティヌス帝の母ヘレナがエルサレムで見つけた「真の十字架と(イエスを打ちつけた)聖釘」、聖ペテロの弟、「聖アンデレの十字架」で、これらを手にした4体の彫像が大天蓋を見守っています。
そしてこの写真が真の十字架とキリストを十字架に打ちつけた聖釘を持つ聖ヘレナ。

僕が初めてサン・ピエトロ大聖堂を訪れたときに、ミケランジェロのピエタと共に、とても惹かれたのがこの聖ヘレナの像でした。当時はどんな意味がある彫像なのか知らなかったけど、何か僕の感性に響いた彫像でした。
豪華絢爛で巨大な空間を作るサン・ピエトロ大聖堂。キリスト教徒ではない僕には、装飾のすばらしさや聖堂内の荘厳な雰囲気もさることながら、人間の創造力の果てしなさと信仰の力に驚くばかりでした。
信仰の力がなかったら、ピエタも聖遺物の4つの像も、大天蓋も何も生まれていなかった。そして人間の想像力がなければ天才たちが素晴らしい作品を残すこともなかったでしょう。でも現代、僕はそれぞれを見て感嘆する。それぞれに感謝です。