
アヤソフィアは東方正教会の聖堂として誕生したので、平面プランも縦横が同じ長さのギリシア十字の形をしています。カトリック教会のいわゆるラテン十字(一方が長い)とは違い、正方形の建物の外形に、中央のドームを中心にギリシア十字の形に、身廊、側廊が配置されています。

アヤソフィア(三代目)の建築にあたり、皇帝ユスティニアヌスは「過去にも未来にもない新い聖堂」の建設を指示しました。それは「神の座」「天上」を象徴する「ドーム」を頂いた大聖堂とすることが命題となり、技術的には初期キリスト教以来の伝統的な「バシリカ様式(四角い箱)」と「ドーム(半球)」の結合が最大の課題となります。
アヤソフィアの建設を任されたアンテミオスとイシドロスの二人は天頂のドームを半円(1/4球)の複数のドームで支える構造を考案して実現しました。ドームの土台である円周は、横に接する半円のアーチで支えられて、それを埋めるように三角形のペンデンティブ部分も連続的に円弧状に繋げ、ドームの円周からの重力を支える構造になっています。文字で書くとややこしいのですが絵に書くと下のような感じ。

半球のつながりだけだと、頂点部分の点しか支えられないのですが、ペンデンティブ(三角形の部分)によってドームの全周を支えることができる。この構造を発明したおかげで、ユスティニアヌスが願った「過去にも未来にもない」独創的なアヤソフィアのフォルムが誕生しました(実際には、アヤソフィアを模してたくさんの教会やモスクが作られたので「未来にはある」ですが)。
またこの構造はおおよそ天井高さ最大55.6m、平面で75mx30mという柱のない巨大空間を生み出すことになるのでした。これは当時として驚異的なものでした。
ドーム
アヤソフィアのドームはアンテオミスとイシドロスの計算と、ロードス島のレンガとローマンコンクリートによって実現しました。
◾️ロードス島のレンガ
直径30mを超える大きなドームを実現するためには、構造物の軽量化が大きな鍵を握ります。そのために重量が通常の1/12という特別に軽いレンガがロードス島で特別に作られ、ドーム形状に沿うように湾曲した形もサイズも異なるレンガをドーム状に組み上げ、さらにこのレンガ構造を覆い固めるようにローマンコンクリートが使われています。
◾️ローマンコンクリート
ローマンコンクリートは通常の石灰に砂に加え、火山灰を混ぜ込み海水で作る古代ローマで発明された技術で非常に優れた耐水性と耐久性を持ちます。さらにパンテオンのドームと同じ「コンクリートに軽石を混ぜて軽量化する」という手法も継承されて、アヤソフィアのドームは実現されたのでした。
◾️アヤソフィアの壁
ここにもローマの建築技術が使われます。短冊状のレンガの構造体を作りその隙間をローマンコンクリートで埋めていく。ローマ建築のほとんどに見られる構造で、完全な石造に比べとても工期が短く、高い強度を得られるミルフィーユ構造。ローマの建物ではその外側をトラバーチンや大理石の化粧板で覆い、大理石作りのように仕上げていましたが、アヤソフィアは一番外側をローマンコンクリートと同じ成分にレンガ粉を混ぜ込んだモルタルで覆います。
アヤソフィアを輪切りにすると中央のドームを頂点に左側(東側)は二つの小ドームに支えられ、右側(西側)は一つのドームに構造的に支えられているのがわかります。

実際のアヤソフィアの内部、一番上に見えるのが直径31mのドーム。底辺の円周部分に窓が並びそこから入る光が堂内を優しく照らします。その先にもドームがあり、さらにそのドームを三つの小さなドームが支えているのがわかります。
この時、高い高い足場を組んで天頂ドームの一部が修復が行われていました。

完成当時、アヤソフィアの構造は斬新かつ画期的なものでした。しかし構造設計的な欠陥が見つかり、建設途中に徐々に歪みが発生、本来真円だったドームは若干の楕円形になってしまいます。また強度不足もあったため数度にわたる地震に耐えられずにドームが崩壊し、修復時に構造強化が施されていきます。その結果、ドーム高さは創建当時よりも約6.5mほど高くなっていたり、外観的にもバットレスを多く追加されオリジナルの状態からは違っている部分もあります。
でも、中央にドームを配置していくつもの円蓋を組み合わせペンデンティブで繋いでいくこの構造は変わることなく引き継がれます。建築史上アヤソフィアで初めて登場したこのフォルムは、その後に作られた多くの教会や、後世に作られたたくさんのモスクがこのアヤソフィアのフォルムを継承されていくのです。