ローマの石畳の道を行くと、その先に神殿のファサードが現れました。太陽の光を反射する石畳のその向こう、何やらギリシアの神殿のような建物が目に飛び込んできます。二千年形を変えることなくこの場所にあり続ける建物「パンテオン (Pantheon)」です。いま二千年前の空間に向かって、少しずつ近づいていく。そこかしこに古代の遺跡が顔をだすローマの街にあって、このパンテオンが現れる瞬間は格別です。
端正な三角形のファサード、優雅な柱頭のコリント式円柱をもった建物は、いわゆるギリシアスタイルの神殿のように見えます。
道がきれ、広場に入ります。
通りから顔を出していたファサードは一見、コリント式の神殿を思わせるのですが、ロトンダ広場に入ると、その強烈な個性があらわになりました。広場の反対側に立つと、その不思議な全貌を知るとことができます。
コリント式の神殿のファサード、その後ろには丸いドーム。こんな不思議な形はほかに見たことがありません。パンテオンは、すべての神々にささげる神殿として建てられました。そして、帝国ローマの時代からほとんど姿かたちが変わっていない。
これからこの、とても貴重な建物について綴っていきます。
P.S. 上の写真は1991年に僕が初めてローマを訪ねたときに撮った写真です。真夏に汗だくになってローマを歩いた時に撮った写真。これを書いている今は2024年なので、あれから33年もの時間があっという間に過ぎているということに、ちょっとした驚きを感じます。人の人生にとっての33年はとても長い時間ですが、この間、パンテオンは何も変わることなく存在している。パンテオンはもう二千年変わらずここにある。パンテオンにとっては33年なんていう時間は変わりようのないほど短い時間なんだということを僕は改めて思い知るのです。