cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

イタリア

トレヴィの泉 願いが叶う

トレヴィの泉といえば、泉を背にしてコインを投げ入れることで願いが叶う、という有名な言い伝えがあります。一体いつからどうやって「コインを投げると願いが叶う」ことになったのかは、はっきりした記録がないようです。 313年に皇帝コンスタンティヌスに…

トレヴィの泉

ローマの渋いレンガ色の建物に挟まれた路地を歩いて行くと、その隙間から目を覚ますような真っ白な壁が顔を出します。もう少し進んでいくと、それほど広くはない四角い空間が開けるんです。そしてその空間を囲うある一つの建物の壁には目の覚めるような白亜…

古代ローマ小話 謙帝ハドリアヌス

皇帝ハドリアヌス(在位117〜138年 CAESAR PVBLIVS AELIVS TRAIANVS HADRIANVS AVGVSTVS) 2000年ほど前の今日(138年7月10日)に皇帝ハドリアヌスが息を引き取りました。 五賢帝三人目の皇帝で、若い頃からギリシア文明に精通した文化人であり、政治、軍事か…

古代ローマ小話 トライアヌスの躍進

ローマ史上「全盛期」と言われる期間、その最初を担ったのが皇帝トライアヌス(CAESAR MARCVS VLPIVS NERVA TRAIANVS AVGVSTVS)。 トライアヌスはヒスパニア(現スペイン)属州に生まれた史上初めての属州生まれの皇帝となりました。生まれなんぞどこだって、…

古代ローマ小話 皇帝ティトゥスの災難

皇帝ティトゥス(TITVS FLAVIVS CAESAR VESPASIANVS AVGVSTVS)はフラヴィウス朝2代目の皇帝として、紀元79年に即位します。ところが、その即位とほぼ同時にヴェスヴィオ火山の噴火、ローマの大火、疫病という未曾有の災害に見舞われ、逃げることなく対策に挑…

ちょっとローマ史10 帝政初期〜五賢帝の時代

古代ローマは王政から共和政、共和政から帝政へ長い歴史の中で国の政体を変えてきました。紀元前753年の建国から約250年は王政、そのあと約500年は共和政です。 ◾️王政から共和政へ 王政から共和政への変化は、王政の後半にいわゆる「暴君」があらわあれ、そ…

コロンナ広場

パンテオンから300mほど離れた場所に「コロンナ広場(Piazza Colonna)」があります。コロンナ(Colonna)とは「記念柱」のことで、ここには五賢帝最後の皇帝マルクス・アウレリウス(CAESAR MARCVS AVRELIVS ANTONINVS AVGVSTVS)の戦勝を記念して作られた美しい…

古代ローマ小話 暴君ではなかった暴君たち

コロッセオの落成式が行われたのが紀元後80年。そこに至るまでには様々な紆余曲折がローマにはありました。 カエサルが帝政ローマをグランドデザインして、その後を継いだアウグストゥスがローマ帝国とパクスロマーナを完成させ、アウグストゥスはカエサルの…

ナヴォナ広場 不思議な形

ナヴォナ広場のこの不思議な細長い形、その理由はかつてここが戦車競技場(スタジウム / Studium)だったことによるものです。ここはかつて「ドミティアヌス競技場(Stadium Domitiani)」と呼ばれていました。 この競技場はもともとはカエサルが計画し、アウグ…

ナヴォナ広場 美しい広場

数あるローマの広場の中で、もっとも美しいと思われるのがここ「ナヴォナ広場(Piazza Navona)」。 パンテオンから300mほどの距離にある美しい広場です。 細長い広場はバロックの建物で囲まれ、3つの見事な噴水がバランスよく配置されています。写真の細長い…

パンテオン5 変わらない風景

パンテオンは二千年もの間、ローマのこの場所に立ち続けています。長い長い時間を経てもなお、この場所に変わらずにあり続けることは、奇跡のような話であり、それはローマ人のエンジニアたちの叡智によって完成されたこと、ローマがキリスト教国家となって…

パンテオン4 美しきドーム

パンテオンのドームは古代ローマの建築家、エンジニアの手により多くの困難を克服して実現されました。そしてその後二千年もの間この場所に、姿を変えず存在しつづけている。すごいことだ。 僕は前回、ドーム天井実現の最大の問題だった「重量」を克服する手…

パンテオン3 その構造

ローマ帝政初期に誕生し、やがてキリスト教と共にあったことで2千年の時を生き抜いたパンテオンは、古代ローマの技術の高さを今でも世界に伝え続けています。今回はパンテオンの構造について綴ります。 パンテオンの内部空間は 直径43.3m、高さ43.3mの広…

パンテオン2 宮大工の心意気

パンテオンの正面にはラテン語の碑文があります。 M·AGRIPPA·L·F·COS·TERTIVM·FECIT 意味は「ルキウスの息子マルクス・アグリッパが3度目の執政官のときに建てた」であり、パンテオンにはアグリッパがパンテオンを建てたことが大きく刻まれているのです。し…

パンテオン1 全ての神々に捧げる神殿の中へ

パンテオンはローマ帝政初期に誕生し、その形をほぼそのまま維持している貴重な建物です。古代ローマの遺跡はほぼどれも半壊または全壊のような状態であることを考えると奇跡ともいえなくもない。コロッセオでも触れたように、本来ローマンコンクリートを使…

パンテオン0 二千年の時を超える

ローマの石畳の道を行くと、その先に神殿のファサードが現れました。太陽の光を反射する石畳のその向こう、何やらギリシアの神殿のような建物が目に飛び込んできます。二千年形を変えることなくこの場所にあり続ける建物「パンテオン (Pantheon)」です。いま…

古代ローマ小話 ヴィトルヴィウスの建築書

ヴィトルヴィウスがローマンコンクリートの秘密を記したことを、僕はコロッセオ4で書きました。このヴィトルヴィウス(Marcus Vitrvius Pollio B.C.80頃-B.C.15頃)に関する記録はほとんどなく、何年に生まれ何年に亡くなったのか、どのような人生を過ごした…

コロッセオ4 その材料

72年にヴェスパシアヌス帝によって始められたコロッセオの建設工事は、その長男ティトゥス帝に継承され、80年にほぼ完成し落成式が行われました。その後、次男ドミティアヌス帝が行った工事は最上層の座席の整備と、天幕システムなので、実質的にコロッセオ…

古代ローマ小話 パンとサーカス

「パンとサーカス」という言葉、この耳に残るフレーズは一度聴いたら忘れません。そして「パンとサーカスによってローマ帝国は滅んだ」と、この言葉は堕落の象徴のように世の中に広まっていると思われる。実際僕も以前はそう思っていたし、おそらく今でもこ…

コロッセオ3 その構造

2000年前のローマ市民になったつもりでコロッセオの中に入ります。 とはいえ、2000年の時の流れは想像力では隠しきれず、かつてはピカピカだったであろう壁面はすっかり風化して、通路にはどこに使われていたのかもわからない石材が無造作に転がる、なかなか…

コロッセオ2 そのデザイン

コロッセオを実際に間近でみると、その巨大さの割に重々しさや野暮ったさが感じられません。あれだけ見上げるような巨大な建物であっても、見た目の印象は重厚というよりむしろ軽やかですらあります。 ◾️デザインの妙 その理由は大きく2つに分かれる(と僕は…

コロッセオ1 なぜコロッセオか

イタリア語:コロッセオ(Colosseo),ラテン語 :コロッセウム / Colosseum)。 学生時代の歴史の教科書に出てくる2000年前の、5万人を収容する円形闘技場です。などという説明など不要な、おそらく世界でもっとも有名な古代建築の一つ。古代ローマのことは知らな…

コロッセオ0 圧倒される

ある夏の暑い日、僕が初めてローマを訪れたとき、まず最初にカンピドリオの丘に登りました。麓から、美しい階段のような坂道「コルドナータ(Cordonata)」を登って、ミケランジェロがデザインした広場に入り、さらにルネサンスの建物の間を抜けた時、視界が…

コロッセオ 目次

学校で歴史の教科書に必ず載っていた古代ローマの遺跡。だれもが知っているであろう有名な遺跡は、巨大で、美しく、そしてローマの技術の粋を集めた逸品でした。コロッセオを初めて見た時の衝撃から、コロッセオにまつわる様々を綴っていきます。 cmn.hatena…

ちょっとローマ史9 歴代皇帝

帝政期の歴代皇帝をまとめはじめて、最初は大雑把につくろうと思っていた皇帝リストは、最終的に東ローマ帝国が滅亡する最後の皇帝まで、約1400年分のすべての皇帝170名ほどの名前を連ねることになりました。 在位期間は様々で、アウグストゥスのように44年…

ちょっとローマ史8 共和政から帝政へ

約500年続いた共和国ローマは、カエサルによってローマ帝国へと生まれ変わります。多くの人々が信じた共和政は国家ローマそのものの進化に対応できず、その役割を終えることになりました。 カエサルの死と、後を継いだオクタヴィアヌス(アウグストゥス)の巧…

カエサル34 エピローグ

カエサルを書き出して、気がついたら1年半ほどが過ぎていました。さらっと書こうと思って、ここまでずいぶんはしょってきたつもりでしたが、カエサル関連の記事は50、カエサルだけで8万字くらいの文字を費やしたみたいです。 正直とても驚いているのです。な…

カエサル小話 言葉の選択

忘れられない、忘れてはいけないカエサルの言葉たちを。 「文章は、用いる言葉の選択で決まる。日常使われない言葉や仲間うちででしか通用しない表現は、船が暗礁を避けるのと同じで、避けねばならない」 塩野七生著「ローマ人の物語Ⅳ ユリウス・カエサル ル…

カエサル小話 カエサルと現代

カエサルと現代のつながりをいくつか。 ◾️暦カエサルと現代のもっとも身近な接点といえば、暦。誰もが耳にした事のある「ユリウス暦」は、カエサルが、それまで使っていた太陰暦を見直し、エジプトの天文学者とギリシアの数学者に新しい暦(太陽暦)を考案させ…

カエサル33 カエサルのいないローマ

カエサルのいないローマでは、「第2次三頭政治」が始まります。オクタヴィアヌスとアントニウス、それにレピドゥスによる三頭政治なるもの。その目的は反対勢力の壊滅というから、カエサルの時の三頭政治とは趣がずいぶん異なります。 アントニウスとオクタ…