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コロッセオ1 なぜコロッセオか

イタリア語:コロッセオ(Colosseo),ラテン語 :コロッセウム / Colosseum)。

学生時代の歴史の教科書に出てくる2000年前の、5万人を収容する円形闘技場です。などという説明など不要な、おそらく世界でもっとも有名な古代建築の一つ。古代ローマのことは知らなくてもこのコロッセオのことは知っているという人も大勢いると思います。ここではラテン語の「コロッセウム」ではなく、僕が子供の頃に知った名前、イタリア語の「コロッセオ」と呼ぶことにします。

*イタリアで買った絵葉書

◾️なぜコロッセオと呼ばれるのか

コロッセオ(コロッセウム)」とは本名ではありません。今は失われていますが、かつてこのすぐ近くにあった「コロッスス(皇帝ネロの巨大黄金像)」にちなんだ通称で、正式名は「フラヴィウス円形闘技場(Amphitheatrum Flavium)」と言います。コロッセオはその本名が示すようにフラヴィウス一門(Flavius)の皇帝たちにより建設されました。

フラヴィウス最初の皇帝ヴェスパシアヌス(TITVS FLAVIVS CAESAR VESPASIANVS AVGVSTVS)によってA.D.72年に着工され、その後8年の歳月を経てA.D.80年にその長男ティトゥス(TITVS FLAVIVS CAESAR VESPASIANVS AVGVSTVS)帝により完成し落成式が行われます。その後、次男ドミティアヌス(TITVS FLAVIVS CAESAR DOMITIANVS AVGVSTVS)帝が最上階の席を整備して日除けの天幕設備を追加する拡張工事を行いました。

*ローマ文明博物館の模型

◾️なぜコロッセオだったのか

皇帝ヴェスパシアヌスはなぜ、コロッセオを建てたのでしょう。。。

コロッセオが着工される以前のローマは大きく混乱していました。暴君ネロの治世にローマの大半が焼ける大火事(ローマの大火)に見舞われ、キリスト教徒の大虐殺といった不幸な出来事が続き、ネロが自殺した後は1年で3人の皇帝が入れ替わり暗殺されるというローマにとって暗く不安定な時期が続きます。そして、この混乱を納めたのが皇帝ヴェスパシアヌスでした。

ヴェスパシアヌスという人はとても真面目な田舎びと。顔は「膨らまなかったパン」と表現される冴えない風貌、立ち居振る舞いも洗練とは程遠かったと言われる。でもその代わり人に好かれるユーモア溢れる人物だったとか。

「初代皇帝アウグストゥス(〜クラウディウス)のような統治を行う」とヴェスパアジアヌスは市民に約束します。そして皇帝と市民が出会える場所、皇帝と市民が一体になれる場所として建設されたのがコロッセオで、その場所は市民から不評だった暴君ネロの黄金宮殿(ドムス・アウレア/Domus Aurea)の人工池の跡地と決まった。

重要な都市機能の一部として、市民の娯楽のため、市民と皇帝が身近に出会うため、コロッセオは建設され、5万人の収容力とそのデザインはこれら目的を果たすために必要十分なものでした。このことはコロッセオの中に実際に入ると、その理由を実感できます。ヴェスパシアヌスが作るべきはこの「コロッセオ」一択だったのでした。

◾️デザインの力

ひとことで言えば「5万人がコンパクトに集まれる場所」それがコロッセオ

コロッセオは程よいフィールドサイズと観客席の角度設定によってか、競技フィールドに立つと、観客との距離がとても近く感じます。どこの席からも皇帝の姿がよく見えただろうし、剣闘士の試合への熱狂も全体に伝わり安く、一体感が生まれやすい空間だっただろう。コロッセオに実際に入ると、そこにヴェスパシアヌスの意図を感じることができるのです。ヴェスパシアヌスの掲げた目的のためには、ギリシア伝統の半円形劇場ではダメ、チルコマッシモのような大競技場は大きすぎ、首都ローマにあってこの収容人数、このサイズ、この形である必要があったのでした。

混乱の時代を経て、時代が首都ローマに求めたコロッセオは、生まれるべくして生まれたのでした。

 

ヴェスパシアヌスは皇帝になった時すでに60歳。コロッセオの完成を見ぬまま病死してしまいます。先帝の意思は長男ティトゥスが引き継ぎ、着工から9年後にフラヴィウス円形闘技場は完成するのでした。A.D.80年にティトゥス帝が行った盛大な落成式典は100日に及び、この間9000頭の猛獣が殺され、2000人の剣闘士が死んだといわれています。これほどの命の犠牲をもって、というのはどうかと思いますが、コロッセオはそのヴェスパシアヌスの意図した役割を十二分に果たしていきます。

 

次回は「建物」コロッセオを。

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