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コロッセオ4 その材料

72年にヴェスパシアヌス帝によって始められたコロッセオの建設工事は、その長男ティトゥス帝に継承され、80年にほぼ完成し落成式が行われました。その後、次男ドミティアヌス帝が行った工事は最上層の座席の整備と、天幕システムなので、実質的にコロッセオは72年〜80年のわずか9年で完成したことになります。

一概に比較は難しいものの、中世ヨーロッパのゴッシック教会建築などは百年、二百年はあたりまえ、五百年かけてようやく完成したものがザラにあることを考えると、このコロッセオの巨大さで9年ほどで完成というのは驚異的な早さです。

それにはコロッセオに用いられた材料にその秘密があるようです。

◾️トラバーチン

コロッセオの主な石材は「トラバーチン」という石材が多く使われています。トラバーチンは石灰岩の仲間。温泉が近い場所で産出されるといい、トルコのパムッカレに見られる白い石灰棚と同じ、鍾乳洞を形成する鍾乳石と同じ白い石。

*トルコはパムッカレの石灰棚

加工がしやすく、軽く、高い強度を持つのが特徴の石材で、ローマ近郊のティヴォリ(Tivori)が当時から有名な産出地です。「トラバーチン」という名前はこの産地「Tivori」のラテン語名Tiburに由来します。コロッセオの基本構造はこのトラバーチンで構成されたので、ローマ近隣の産地から、潤沢に良質な石材が供給されたというのは工期が短かった大きな理由の一つとなります。

◾️ローマンコンクリート

コロッセオのもう一つの重要な構成材料はコンクリートです。古代ローマで用いられたコンクリートは「ローマンコンクリート」と呼ばれ、コロッセオだけでなく多くのローマ建築に用いられました。コロッセオでは、トラバーチンで組まれた構造の間を埋めるようにローマンコンクリートが使われ、内部天井の形成や大半の座席部分などが形作られたのでした。

現代のコンクリートは耐久年数が30年〜100年と言われる一方で、ローマンコンクリートは2000年の耐久性を誇ります。ローマ人は当時からローマンコンクリートの耐久性の高さを認識して、多くのローマ建築に使用しました。その代表格はパンテオン(詳しくは後ほど)。

ローマの建築技術者ヴィトルヴィウス(Vitrvius)は紀元前30年頃に皇帝アウグストゥスに捧げた著書「建築論(De Architectura)」でローマンコンクリートを紹介しています。この「建築書(De Architectura)」はルネサンス期に再発見され編纂されて、現在に至るまで重要な建築教書として読まれています。そこでヴィトルヴィウスは、ローマンコンクリートには「恐るべき効果を生む粉を混ぜ込んでいる」と記述しています。

現代のコンクリートはセメント+砂+砂利+水で構成され、耐久性は30〜100年程度といわれます。ローマンコンクリートはそこに「恐るべき効果を生む粉=火山灰」を加え、水は海水を使用したと言います。コンクリートの劣化の原因は内部にできる気泡に水分が入り侵食されることによる。この火山灰を入れることにより、この気泡が水が侵入できないほど小さくなり、とても密度高く固化する。この効果により水の浸食を妨ぐことで、鉄筋などの補強もなしに地震や侵食にも負けない2000年という驚異的な耐久性を実現しているといいます。

コロッセオの外郭が失われたところを観察すると、トラバーチンによる柱やアーチのその間が石材ではない材料で埋められていることがわかります。内部構造の天井や観客席部分もローマンコンクリートで構成されていました。トラバーチンはティボリで火山灰はポンペイでヴェスビオ火山の火山灰がふんだんに入手可能な環境でした。

 

コロッセオは良質なトラバーチンとローマンコンクリートによって建設されました。

特にローマンコンクリートの技術は二千年前に考案され、その耐久性の高さはコロッセオパンテオンなどローマ建築の現在の姿が証明してくれます。コロッセオは単なる石造りの建造物ではなくローマンコンクリートを効果的に組み合わせることであれだけの巨大建造物を短期で完成させ、さらに二千年もの間存在させてきたということなのです。

 

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