cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

卒業おめでとう

明日は長女の小学校の卒業式。

早いもので、彼女が生まれてもう12年も経つ。

結婚してから中々子宝に恵まれず、ようやく長女が生まれたのは8年後。もう子供には会えないのではないだろうかと諦めかけた頃に長女がやってきた。僕にとっては天使のような長女がうちにやってきた。それから生活がガラッと変わって大変だったけどとても充実した日々だった。

超音波を出しながら大音量でよく泣いて、哺乳瓶のミルクがなくなるとこれまた必ず泣いて、夜なかなか寝付けなくて仕事から帰って毎晩深夜に車に乗せて寝るまでドライブしたり、とにかく世話の焼ける子だった。でも2歳の時に妹が生まれてから、すっかりお姉さんにしっかり者になった。妹にパパママ取られて辛かったろうに、たくさん我慢してくれた。

 

幼稚園に入る頃には笑うのも泣くのも怒るのも常に全力投球。家の中でも外でも常に全力疾走で本当に元気に過ごしてくれた。小学校に入学してからも妹と一緒に楽しく過ごしてくれた。何にでも一生懸命、ちょっと人付き合いが不器用なところがあるけど、長女は名前の通り凜々しく成長してくれた。

でも、長女が小学校4年生の年に、僕は会社を変えた。自分のやりがいを持てる仕事、子供達が誇りに思ってくれると思える仕事に就いた(つもりだった)。それから、単身赴任のような生活になって、仕事もハードだったおかげで僕は気がつくと家族を置き去りにしてしまった。当時、一生懸命働いて、子供たちの将来に色々な可能性を持たせてあげることが僕の役目だと思っていた。でも、それは家族の望んでいることとは違っていたことに気づかなかった。

僕は自分の夢と家族のためと思って、一生懸命働いた。でもそうすることで家族との時間もなくなり、知らず知らずのうちに心も荒んでしまい、子供達に大きく精神的な負担をかけてしまっていた。

家に帰り、明日からまたしばらく仕事で家を開ける前の夜、よく長女は泣きながら、「パパと一緒に暮らしたい」と言っていた。それでも僕は世の中単身赴任の家庭はたくさんある、自分はみんなのために働いているのだからと、しばらく聞く耳を持たなかった。今思えばもっと泣きたかったのかもしれない。たくさん我慢してくれていたのだろうに、とても可哀想なことをしてしまった。

そんな風に過ごしたおかげで仕事は結果を残し、新しい会社である程度のポジションも得て、さあこれからもっと大きなことができるというところまできた。

 

でも、そこで僕は仕事を辞め、家に帰った。「このままではいけない」とようやく気付いた。

完全に仕事を終えて家に帰ったら、夜遅かったのにみんなでおかえりパーティを開いてくれた。長女が6年生に、次女が4年生になる春のこと。

それから1年、毎日学校へ「行ってらっしゃい」と「おかえり」、その後すぐ友達と遊びに行くのにまた「行ってらっしゃい」と「おかえり」を繰り返し、毎日ご飯も一緒に食べて、お風呂にも入ってずーっと一緒に過ごすことができた。

その時気がついた。定期的に帰って、一緒に過ごして、成長を見てきたつもりだったのだけど、見えてなかった。「こんなに大きかったっけ?」とか、いつの間にか家の中を全力疾走しなくなったり、笑うのも怒るのも控えめになって、泣くことはほとんどなくなっていた。こんなことを僕は気づかないでいたんだ。僕はこの何年か、良かれと思ってがむしゃらにやってきたことが間違っていたことにようやく気付いた。

ちょうどその春に映画ドラえもんを家族で見た。そこには良かれと思って仕事に没頭するあまり、人格が変わり、子供達を省みることのなくなった父親「キャプテン・シルバー」が描かれていた。自分はまさに「キャプテン・シルバー」だった。僕はドラえもんを見ながらたくさん泣いた。

 

それからというもの、とにかくたくさん一緒に過ごした。たくさん旅行にもいった、夏休みもたくさん遊んで、一緒に勉強して、自由研究も一緒にやって、冬休みもたっぷり年越しもお正月も過ごして、そうこうしているうちにもうすぐ春休み。本当は秋には仕事を始めようと思っていたのだけど、気がつけばあっという間に1年経ってしまった。

 

これから若い時に持っていた夢を仕事で叶えることはできないかもしれない。僕の仕事を子供たちが友達に自慢することもできないかもしれない、そもそも就職できるかわからない。それでも仕事を辞めて1年間、家族と一緒に過ごしたお陰で、失くしかけた掛け替えのないものを色々取り返すことができたと思う。長女の小学校最後の1年に、次女の多感な時期に父親に戻ることができたような気がする。

これからのことはこれからなんとかしよう。

 

この先大人になるまで、大人になっても色々なことが起こり、悩まされる。自分で考えて自分の力で生きていけるように、近くで、影で支えてあげたい。

 

間に合ったのかな。

卒業おめでとう。