cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

ゴッホとオーヴェル 〜ゴッホの足跡

f:id:fukarinka:20200414182043j:plainゴッホ終焉の村、オーヴェル・シュル・オワース。

パリの北西約30km、セーヌ川に続くオワース川のほとりにこの小さな村はあります。オーヴェル・シュル・オワース(Auvers-sur-Oise)はオワース川沿いのオーヴェル村という意味。細長い形をした村から発するように広がる麦畑や生い茂る樹々といったのどかな田舎の風景が印象派の画家たちを引き寄せたと言います。

僕は夏のある日、ゴッホを辿ってこの村に来たのだけど、他にもコロー、ドービニー、セザンヌピサロらがここで絵を描いていました。

ゴッホはアルルを去ってサンレミの精神病院で1年を過ごした後、ピサロの紹介で精神科医ガシェ医師を訪ねて1890年5月20日にオーヴェルにやってきた。

ゴッホがここで過ごしたのは僅か2ヶ月ほど。その間70枚の作品を残して37歳で亡なった。

この小さな村でゴッホの作品が描かれた場所をいくつかを辿ってみた。

 

オーヴェルの教会(所蔵:オルセー美術館

f:id:fukarinka:20190404024756j:plain

オーヴェルの教会 1890 @オルセー美術館 Paris

f:id:fukarinka:20190404022537j:plain

オーヴェルの教会は村の端の丘の上、麦畑の入り口に建っている。誰もいない静かな時間。うだるような暑さだったけど前の日にオルセーで見た「オーヴェルの教会」のような陰鬱な印象もゆがみもなく、静かに整然と佇んでいた。この現実の教会を前にして作品とのギャップが何とも言えず、当時のゴッホの苦悩をより実感させてくれることになった。この静かでのどかな教会があの絵のようになる、もちろん画家としての表現であるのだけど、それ以上にゴッホの心のゆがみ、苦悩を思わずにいられなかった。

 

オーヴェルの町役場(個人蔵)

f:id:fukarinka:20190404024531j:plain

オーヴェルの町役場 1890 @Private correction

f:id:fukarinka:20190404024618j:plain

ゴッホが描いたそのままの姿が残っています。明るいタッチのこの絵は心穏やかに見ることができます。

 

 

教会の向こうには広大な麦畑が広がっています。そこでゴッホは10以上の作品を残しています。今ではかつてゴッホイーゼルを立てた場所に看板が立ち、ゴッホが描いた場所が作品と一緒に示されています。

 

雨のオーヴェルの風景(所蔵:カーディフ国立博物館

f:id:fukarinka:20190404024940j:plain

ここはオーヴェルの雨の風景が描かれた場所。オーヴェルの雨を浮世絵と同じいく筋もの線で表現されている作品。

f:id:fukarinka:20190404172720j:plain

雨のオーヴェルの風景 @カーディフ国立博物館 カーディフ/英国

所蔵先について、なぜか日本語サイトではカーディフ国立博物館とあり、ローカルサイトではWales National Museum(ウェールズ国立博物館)となっています。検索する際はご注意を。ちなみにWalesウェールズ)はイギリスのなかの4つの王国の一つWalesで、Cardiff(カーディフ)はそのWalesの首都です。

 

 カラスのいる麦畑(所蔵:ゴッホ美術館)

f:id:fukarinka:20190404025054j:plain

カラスのいる麦畑 @国立ゴッホ美術館 アムステルダム/オランダ

f:id:fukarinka:20190404025322j:plain

この「カラスのいる麦畑」はゴッホの最後の作品とも言われ、カラスの群れや昼間なのに暗く渦巻く空は、病んで自殺に追い込まれてしまったゴッホの心のうちを表しているよう。

ゴッホの心の中を描いたような絵とは対照的に、実際の風景は明るくてのどか、そしてとても静かでした。オーヴェルで描かれたゴッホの絵はアルルでの作品と明らかに違う。同じ画風であっても、アルルの絵は構図も色使いもとても明るいものが多い。一方、精神を病んでしまった後、自殺へと心が傾いてしまったオーヴェルの絵はその実際の風景からは想像できない、ゆがみや暗さに支配されているように思える。ゴッホが描いた現場に行ってみて、そのギャップが鮮明に感じられた。オーヴェルの教会の絵でもコメントしたように、そのギャップが当時のゴッホの苦悩を僕に訴えてくる。

 

ゴッホは1890年7月27日にこの麦畑の一角で、自分の胸にピストルをあてて自殺を図ります。でも麦畑で死ぬことはできず、住処であったラブー亭の屋根裏部屋に自力で戻るのです。その2日後、ゴッホは37歳の生涯を閉じることになるのです。

 

関連情報

「オーヴェルの教会」所蔵 →  オルセー美術館

「カラスのいる麦畑」所蔵 → Van Gogh Museum  - in Amsterdam

「雨のオーヴェルの風景」所蔵 →

French Impressionism and Post-Impressionism | National Museum Wales

MMM|オーヴェル=シュル= オワーズのゴッホを訪ねる

 

 

cmn.hatenablog.com

cmn.hatenablog.com

cmn.hatenablog.com