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旅行の記憶と何気ない日常を

小話 Van Gogh Alive(ゴッホ展)

僕の会社は天王洲、寺田倉庫(美術館)から歩いて5分。寺田倉庫は以前は「スターウォーズ模型展」や「ジブリ展」といったメジャーどころから、「建築模型展」というとても渋い展覧会など、とても僕の好みにマッチした企画展を提供してくれます。この日は昼食も取らずに対応していた仕事が一区切りしたので、息抜きにふらっと寺田倉庫に行ってみました。たしか建築構造展みたいなのをやっているはず。。。そうしたら、こんなゴッホの展覧会が開催されていたので、ほんの15分くらい観て帰ろうと思って入ってみた。

「Van Gogh Alive」と銘打ったこのゴッホ展には本物は一枚もない。でも、ほんの15分と思って入ったのものの出てきた頃にはたっぷり1時間ほどの時間が過ぎていました。

若かりし日のゴッホの肖像

最初導入部分でゴッホの代表作のイラストとゴッホが弟テオに送った手紙のなかで語られた言葉たちが並びます。

途中こんな、アルルのゴッホの部屋が再現されてました。

この辺までは、通常の展覧会と変わりません。

そこから先に進むと、
天井の高い広い空間に、大小向きや角度も様々に違うスクリーンに高精細にゴッホの作品が投影され、しとやかなクラシック音楽と共に、ゴッホの人生に沿って次々と映し出されていく空間へと変わっていきます。

そこにでは、映像と音楽によってゴッホの生涯が語られていきました。

 

ちょっと陰鬱なオランダ時代。

オランダ時代、陰鬱な絵が多いのだけど、どれもその後のゴッホを彷彿とさせる作品たち。

 

ゴッホはパリに出る。

ゴッホはパリで印象派と出会い、日本の浮世絵に出会い衝撃を受ける。

 

そして、見たことのない日本の太陽を求めて、南フランスのアルルへ行きます。そこで芸術家の仲間が集まり共同生活しながら作品を作っていく、「芸術家のコロニー」を作るのがゴッホの夢でした。そしてその夢の舞台となるはずだったのが、このアルルの黄色い家。

ゴッホは日本の浮世絵の中に、日本の太陽を感じ取りました。その色彩は黄色。ゴッホは「日本の太陽」を求めて、南フランスにやってきた。そしてゴッホはそこで「日本の太陽」を感じて、たくさんの作品を描いたのです。

 

ゴッホは黄色い家をひまわりの絵で埋め尽くして、画家仲間の到着を待ち侘びた。

でも、アルルを訪ねてきたのゴーギャンただ一人。そのゴーギャンとの共同生活もあっという間に破綻する。芸術家のようなとんがった人たちが、共同生活なんて僕は無理だと思う。でもゴッホはパリの酒場で仲間と芸術論を交わしたような、そんな生活に憧れたのかもしれません。

これはアルルを流れる「母なるローヌ川(La Rhone)」の夜を描いた、「ローヌ川の星月夜」。

ゴッホはたくさんの人と出会いその肖像を描いた。

ミレーに習って農村風景のと農夫たちを描いた。

アルルで描いた「赤い葡萄畑」。この一枚、このたった一枚だけが、ゴッホ生前売れた作品でした。突然この作品が映し出された、無意識に慌てて撮り残した一枚。

ゴーギャンと芸術に対しての意見が対立し、耳切り事件をきっかけにゴーギャンはアルルを去り、ゴッホは精神に異常をきたしてしまった。ゴッホは弟テオにこんな言葉を手紙に書いている。「ぼくは絵を描くことにあまりに集中しすぎてしまって、精神を壊してしまったようだ」ゴッホはアルルの精神病院で治療した後、サン-レミへ移ります。アルルで過ごした1年余りの期間にゴッホは100枚以上の作品を残しました。

 

サン-レミでは花を描いた。

夜空が渦巻く「星月夜」もサン-レミで生まれた。アルルで描いた「ローヌ川の星月夜」とは明らかに違う夜空の描写はゴッホの精神状態を表している、と感じます。

 

 

ゴッホはパリから少しだけ離れたオーヴェル・シュル・オワース(Auvers-sur-Oise)という小さな村へ移ります。友人ピサロからオーヴェルの精神科医ガシェ医師を紹介されてのことでした。

オーヴェルの小さな村のすぐ裏には広大な麦畑が広がるんです。そして、ゴッホはこの麦畑でピストル自殺を図ります。

胸に一発、ゴッホは自分で自分を打ったのですが死にきれず、オーヴェルの下宿ラヴー亭の自分の部屋、小さな屋根裏部屋に戻ります。オーヴェルのガシェ医師が駆けつけ、パリからは弟テオも駆けつけ、ゴッホは2日後に息を引き取った。

 

と、こんなふうに、様々なスクリーンにゴッホの絵を映しながら、ゴッホの生涯を紹介する、というのがこの「Van Gogh Alive」でした。本物は一枚もないゴッホ展。でもその内容はとても見応えのあるものでした。

僕はゴッホの足跡辿って、オランダからパリ、アルル、オーヴェルを巡ったことがあります。ゴッホが過ごしたパリのモンマルトルの喧騒や、希望に溢れ、そして破れたアルルや、オーヴェルの麦畑や教会や、息を引き取ったラヴー亭の小さな屋根裏部屋。ゴッホの希望と絶望と精神を病むまで情熱を注いだ絵画たち。「Van Gogh Alive」で再びゴッホの生涯を辿りながら、その時の旅のことを思い出して、ところどころ泣きそうになったりして、なんともエモーショナルな時間になったのでした。そんなわけで、15分くらいと思っていたのに、気がつけば1時間がすぎていた。。。。

そんな貴重な昼下がりでした。

 

以前書いたゴッホに関する記事です。お暇な時にどうぞ。。。

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