ポン・ヌフ(Pont Neuf)
ルーブルの側からセーヌ沿いに歩くと、シテ島にかかるポン・ヌフが最初に迎えてくれるます。ポン・ヌフ(新しい橋)という名前のパリ最古の橋は、1606年の完成以降ほぼ原型をとどめながらシテ島をパリの左岸と右岸を繋ぎます。
ポン・ヌフはそれまで洪水のたびに流されてしまった構造的に貧弱な橋に代わって、当時の架橋技術の粋を集めて作られた石の橋。完成して400年その姿を保ったことで、パリでは「頑丈」の代名詞のような橋となりました。
また、完成当時は大勢の見物客がこの界隈に押し寄せた。その見物客需要をあてにして誕生したのがあの「ブキニスト(古本市)」だと言われています。
この頑丈な作り、水圧をいなすための橋脚の三角の形状は古代ローマの技術です。古代ローマの橋の多くは純粋な円形のアーチで橋脚をつなぎましたが、ポン・ヌフでは半楕円形のような扁平アーチで構成されています。これにより橋のシルエットが軽やかになり、より優雅なデザインが可能となったのです。扁平アーチは15世紀頃にルネサンスの最中にイタリアで発明された技術で、ポン・ヌフでその新しい技術を取り入れます。その後セーヌにかかる橋の多くがこの構造をとっているのです。
頑丈であると同時に、長い間パリで一番道幅の広い橋でもありました。
1606年橋が完成した当時はフランスはアンリ4世が統治しており、ポンヌフの開通式はアンリ4世のもとで行われました。それを記念してポン・ヌフの途中にはアンリ4世の騎馬像があります。
朝日を受けるアンリ4世
頑丈なだけでなくデザイン的にも優雅なポンヌフは、機能と美の両立という古代ローマ建築の心意気を受け継いだものになった。セーヌにかかる優雅な橋は、モネ、ルノワール、ピサロ他、沢山の画家にその姿を描かれてきた。ポンヌフの誕生は、他の橋にもそのスタイルを伝搬することになり、今に至るセーヌの景観を決めた大きな出来事でした。