リド島の海岸で初めてアドリア海を見たときのこと。
潟とは違うクリアな海とヴェネツィアの他の島にはなかった砂浜、水平線の遠くにはたくさんの大型船。島のこちらとあちら、わずか数百mしか離れていないのにまるで別世界でした。初めて見たアドリア海はなんだかとても新鮮な海でした。
このときはもう9月の終わりで風が冷たく、砂浜には犬と散歩する人、ジョギングする人がちらほらいるくらい、ほとんど自分ひとりだけのプライベートビーチの状態でした。
しばらく海を見ながらぼーっとすごしていると海の中に何か動くものがあった、ような気がした。あれ?と見てみるのだけど、やっぱり特に何もない。気のせいだろうとまたぼーっと海を眺めていると、次の瞬間、浮かんでいたブイから2本の手がにょきっと生えてきた。
ブイが浮かんでると思っていたものは海水浴してるおじさんだった。この寒いのに。
おじさんはその後、砂浜にあがりどこかへ去っていった。