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フィレンツェ8 ウフィツィ美術館

f:id:fukarinka:20220115175756j:plainウフィツィ美術館 (Galleria degli Uffizi)

1559年、ここはトスカーナ大公国の事務所(オフィス=Uffizi)としてヴァザーリにより建設されました。コジモ1世はこの事務所にトスカーナ大公国の行政機関を全て集めるつもりだったようです。

1581年、コジモ1世の跡を継いだフランチェスコ1世は、事務所の最上階にメディチ家が代々収集した美術品を収蔵することを決定します。これが今に続くイタリア・ルネサンスの美の殿堂「ウフィツィ」の始まりとなりました。

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ルネサンス珠玉の名作が集まるウフィツィに入るには長い長い列に並ばなければならなりませんでした。今ではネット予約でもう少しスマートになっているのかもしれません。

ウフィツィは外観も内側もルーブルのような広さや華やかさはなく、ヴァチカン美術館のような荘厳さもない、溢れるほどのコレクションがあるわけでもない。もと事務所のこじんまりとした、言ってしまえば「地味な」館内。そこに入るために、長い長い列に並ぶのです。

でもその長い列に並んでも見てみたい珠玉の名画が、それもルネサンスそのものと大きく関わる逸品がここにはあるんです。

 

「受胎告知(Annunciazione 1472-75) 」レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci 1452-1519)

ヴェロッキオ工房から独立してまもなく手がけた作品。ヴェロッキオとの共作「キリストの洗礼」、「東方三博士の礼拝」とともにウフィツィ第15室の壁を飾る(この当時)。

世の中にある受胎告知を題材にした数々の絵とは一線を画した独特の雰囲気と、遠近法を用いた構図、「モナ・リザ」などレオナルドの作品に登場する「不思議な世界」が背景に描かれている。ルネサンスを象徴する新しい絵画の始まりを告げる、その後のレオナルドが詰め込まれた象徴的な一枚です。

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f:id:fukarinka:20220102182826j:plain*ウフィツィで購入した絵葉書

 

次はボッティチェリ

依頼主にとって不安定な仕事に終始する事でパトロンが離れていったレオナルドとは対照的に、メディチ家の庇護を受け多くの作品を残したのがボッティチェリルネサンスといえばボッティチェリ、そんな構図が世界にはあります。

そしてウフィツィにはボッティチェリの作品がとても多いのです。中でも最高傑作とされ、ルネサンスそのものを象徴する絵が「春」と「ヴィーナスの誕生」。この2枚はウフィツィの同じ部屋の向かいの壁に飾られます(当時)。

「春(Primavera 1482年頃)」サンドロ・ボッティチェリ(Sandro Botticelli 1445-1510)

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f:id:fukarinka:20220102182918j:plain*ウフィツィで購入した絵葉書

 

ヴィーナスの誕生(La nascita di Venere 1485年頃)」サンドロ・ボッティチェリ(Sandro Botticelli 1445-1510)

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f:id:fukarinka:20220102182850j:plain*ウフィツィで購入した絵葉書

ルネサンスを象徴する、と言われるボッティチェリの2枚の絵。メディチ家の別荘に飾られていたというこの2つの作品。特に「ヴィーナスの誕生」はそれまでのカトリック教会の教えに縛られていた人々の思考が一気に解放されたことを後世に伝える重要な一枚です。

でもボッティチェリの絵の魅力は「独特な作風」でもあり、ルネサンスとは切り離された独自のものでもある。レオナルドのような神がかり的な絵ではないのだけど、何か人をひきつける特別な空気をこの絵は持っているように思えてなりません。

ボッティチェリと同じ工房に弟子入りしていたレオナルド。同世代で工房の中で互いにライバルとして才能を磨き、競い合ったといいます。やがて対照的な生涯を歩む二人ですが、その画風もまた、この時代の絵画の双璧をなしていると言えます。

 

そして少し遅れてもう一人の天才が現れます。

ミケランジェロ・ブオナロティ(Michelangelo Buonarroti 1475-1564)

聖家族(Sacra Famiglia con san Giovannino 1504年)

ミケランジェロが製作した3枚の板絵のうちのひとつ。丸い額もミケランジェロがデザインしてたそうです。その色彩や構図はその後製作されるシスティーナ礼拝堂の天井がを連想させます。ボティチェリともレオナルドとも違う、彫刻家ミケランジェロの貴重な絵画です。

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*ウフィツィで購入した絵葉書

レオナルドとボッティチェリ、その後に続くミケランジェロ、そしてラファエロ。そのほかにも時間的、空間的にその周囲にはフィリッポ・リッピ、ギルランダイオ、ジョットがいてブルネレスキがいて、ヴァザーリがいて。。。15世紀末のフィレンツェ、このこじんまりした空間にこれだけの才能が集まり、それぞれがその才能を遺憾なく発揮してルネサンスが、ここで花開いたのです。そしてその珠玉の作品が厳選されて、この事務所(ウフィツィ)に静かに控えめに展示されている。このルネサンスの眩さにはウフィツィのこの「地味」な空間がちょうど良いのかもしれません。

 

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