ヴェッキオ宮殿 / Palazzo Vecchio
現在フィレンツェ市庁舎として使われるヴェッキオ宮殿。外観は堅牢で威圧的。それはまるで要塞のごとく花の都の市庁舎としてはイメージがそぐわない、と思っていたら、最初は修道院長の邸宅兼要塞として1294年に工事が始まったということで納得です。
高さ94mの塔(アルノルフォの塔)が1310年に、ヴェッキオ宮殿としては1314年に、20年を経て完成します。フィレンツェ共和国の政庁舎として使用されシニョーリア広場のシンボル的建物であり、サンタ・マリア・デル・フィオーレとならんでフィレンツェを代表する建物です。
同じくアルノルフォ・ディ・カンビオが手がけたサンタ・マリア・デル・フィオーレとは対極な強烈な印象を放ちます。
ヴェッキオ宮殿の入り口にはミケランジェロの「ダヴィデの像(現在レプリカ)」とバンディネッリ(Baccio Bandenelli)の「ヘラクレスとカクスの像(1534年)」が立ちます。
ダヴィデ像は1501-1504年に制作されました。フィレンツェの象徴、人類史における傑作と言われるこの像が、ヴェッキオ宮殿のこの場所に置かれるまではいろいろな紆余曲折があったとか(後日小話にて)。そしてダヴィデのあまりの存在感が故に、後から入口のもう一方に加えられたヘラクレスとカクスの像と作者バンディネッリの可哀想な運命。なかなか複雑です。
1563年コジモ1世は、息子フランチェスコ1世がオーストリア大公の娘と結婚の儀を執り行う2年後までに、ヴァザーリにヴェッキオ宮殿とその周辺の改装を命じました。その間に中庭の回廊、五百人広間、ヴァザーリの回廊などが改装・整備され、重厚な外観からは想像できないほど華やかで豪華な、まさに宮殿へと変貌したと言います。
ヴェッキオ宮殿に入るとすぐ、この回廊のある中庭があります。ヴァザーリはこの中庭の回廊をオーストリアの街の風景を描いたフレスコ画で埋め尽くします。
中央にはイルカを抱える天使の像。これはレオナルド・ダ・ヴィンチの師ヴェロッキオの作品。
1565年12月に執り行われたフランチェスコ1世の婚礼の時にはヴェッキオ宮殿にとどまらず、フィレンツェの街全体が芸術家や職人総動員で装飾が行われ、内外に向けて十分すぎるほどメディチ家コジモ1世の権威が示されたと言います。
このときに整備されたヴァザーリの回廊は、メディチ家専用のヴェッキオ宮殿から現在のウフィッツィ美術館を抜けヴェッキオ橋の上を通り、アルノ川の向こう側のピッティ宮殿まで続く回廊です。住居であるピッティ宮殿から外を通らずに執務行うヴェッキオ宮殿まで行き来できる。そんな屋内通路を通してヴァザーリはそこに沢山のルネサンスの名画を飾った。なんと贅沢な。。。
次はそのヴァザーリの回廊の一部でもあった、ヴェッキオ宮殿すぐ隣、ウフィッツィ美術館について。。