cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

ローマ小話 初めての古代のコイン

随分前のことになりますが、ゴールデンウィークに豪勢な長期休暇をとってヨーロッパに旅行に行く友達に、ちょっとお願い事をしてみました。「古代ローマのコインを買ってきて」と。

当時聞いた話では「古代ローマのコインは遺跡からザックザック出てくるので、そんなに高価なものではない」という。そこで自分もぜひ一枚と考えたのがきっかけでした。

ただ、実際のところ相場も分かっておらず、今のようにネットで検索できる時代でもなかったので、わからないなりに予算を伝えてお金を渡し、「あわよくば共和制後期から帝政初期のころのもの。だめなら予算maxで買えるものを是非」と、ヴェネツィアサンマルコ広場にあるコイン屋の場所を地図を書いて渡してお願いしたのでした。

そして彼が旅立って約30日後、長い長いヨーロッパ縦断旅行を果たしたその友達は、ローマのコインを手に僕の前に現れた!!

彼が僕に買ってきてくれたのは、
AD337年~350年にローマ世界3分割時代の皇帝の一人コンスタンス(Flavius Julius Constans)のもの。キリスト教を国教に定め、首都をローマからコンスタンティノープルに移した「大帝」コンスタンティヌス1世の4男のコイン。

古代ローマのコインを受け取り、26日間ものヨーロッパ放浪で日に焼けた彼と、GWの日曜大工で日に焼けた僕がっちり握手をかわしたのをよく覚えています。

実際にコインを手にすると、これが1700年も前にローマ帝国中を巡って、たくさんのローマ人の手から手へと渡ってきたのだと考えたら鳥肌がたってきた。これを直接に手にしたとき、1700年もの時を経てローマ人と握手を交わしたような、そんな感覚が湧いてきたのでした。

いまでも古代のコインを触っていると同じように感じる時を超えるような感覚は、遺跡に直接触れた時のような、いやそれ以上の感覚。遺跡よりももっと身近に古代ローマを感じることができる、なんとも言葉にするのが難しい感覚なのです。まあ、ただの妄想にすぎないかもしれません。このコインは我が家の家宝となり今に至ります。

ところで、僕が一番ほしかった、共和制後期から帝政初期ころのローマのコインは、現在でもやはり桁違いの価値があり値段も桁違い。カエサルアウグストゥスのものとなれば100万円近い値がつく。そういう市場価値の高いコインにも憧れるけれど、そういう価値のあるものは博物館に保管してもらって時々見れれば良い。手元に置くのは一般のたくさんのローマ市民が扱ったであろう、今回友人が買ってきてくれたコインがいい。

 

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