cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

小話 ユリウス・カエサル

これから"cafe mare nostrum"は「ローマ」へ進んでいくのだけど、そこで触れたい人物がいます。それは、

ユリウス・カエサル(Gaius Iulius Caesar)。

古代ローマ(ヨーロッパ世界)の英雄であると同時に、歴史的にも地勢的にも広く長く人類史に影響を及ぼした人物ではないかと思います。

僕がヨーロッパを旅し始めた頃は、建物以外、さしてヨーロッパに興味があった訳でもなく、ましてやローマ史のことなんて一般常識以外ほとんど知りませんでした。ところが実際に「永遠の都」ローマを訪れてからというもの、ローマへの興味が日に日に、年々高まっていったのでした。なぜかといえば、壮大な帝国の首都ローマの遺跡に感銘を受けて、その後訪れたヨーロッパ各地どこに行ってもだいたい存在するローマの遺跡。〜なぜこんなところに?という疑問が溢れました。調べていくと僕が何年かかけて巡ったヨーロッパの国々は、実はローマ全盛期にはローマという一つの国だったことを知ります。〜かつて地中海をすっぽり覆うほどの「ローマ」という国はいかなるものか??〜なぜ、飛行機もインターネットもない時代、あれだけの広大な地域をどうやって統治できたのか?そしてローマの遺産にふれるとたいてい耳にする(目にする)「カエサル(CAESAR)」の文字。〜なんだ?このCAESARって!?

インターネットがまだまだ万能ではなかった時代、「カエサル」に関する情報集めには本屋に向かいました。すると意外と「ユリウス・カエサル」をあつかったものが見つからない。そこで最初に手にしたのが、あろう事かシェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」だった。ユリウス・カエサルラテン語読み)を英語読みにすると「ジュリアス・シーザー」となるので、とっかかりにつかんだ本だったのだけど、「シェイクスピアジュリアス・シーザー」といえばたいていの人は名前を聞いたことがあるだろうシェイクスピアを代表する悲劇。内容はといえばカエサルを暗殺する加害者側のドラマでカエサルに関してはほとんどふれられていない。よって、カエサル自身に関してはほとんど何も分からない。

次に手にしたのが「ガリア戦記」。これはカエサル自身が紀元前58-51年の約8年間に及ぶガリア(現フランス周辺一帯)遠征を行った際の本人による記録。しかし、これはただの記録ではなく、ラテン文学の名文として今でも世界各国で翻訳されているほどの名著とされていて、「戦記」というより「古典文学」として残っている。日本の書店では「ガリア戦記カエサル著」として普通に並んでいる。2000年も前の人物の著作が現代の作家の作品の隣に並べられているなんて不思議です。

カエサルの記した文章」でガリア戦役8年間の出来事を知ることができたのは良かったけれど、これもカエサルの人生のうち、ほんの8年間の出来事にすぎず、当時の僕には満足行かなかった。

その後いろいろな本屋をのぞくも、なかなかカエサルについて詳しく記されたものが見つからなくて悶々としていたある日、忘れもしない仕事に向かう電車の中である新聞広告が僕の目に飛び込んできたのでした。

「なぜ、カエサルか?ローマ人の物語 第4弾! ユリウス・カエサル ルビコン以前 塩野七生

何!!「なぜカエサルか?」!?

ローマ人の物語Ⅰ~Ⅲ」はそれまで存在は知っていたけれど、当時はまだ手を出せずにいました。ローマ史に興味はありつつも、まだ本腰が入っていなかった僕には、1冊3000円という「ローマ人の物語」のシリーズは敷居がとても高かった。

しかし、この「ユリウス・カエサル ルビコン以前」が出たときは、高かろうが、厚かろうがそんなことより「知りたい」欲求が勝ってすぐに本屋に走りました。この「ローマ人の物語」ではユリウス・カエサルについて、彼の人生でもっとも重要な「ルビコン川を越える」場面でその生涯を区切り、2巻約1000ページにわたって人間ユリウス・カエサルが語られている。

これ以降「ローマ人の物語」シリーズは僕の「超」愛読書となって全15巻にわたるローマ人の通史を読破することになるのです。ちなみにローマ史について誕生から滅亡までの「通史」を書いた人は歴史上、塩野七生氏の他にいないそうで、ローマ人の物語は、史上初めてのローマ通史となったそうだ。それが歴史学者でもない日本人の作家の手によるというのは、いかにもローマ的ですばらしい。

当時僕はこんなことを書いていた。

「第4、5巻で語られるカエサルという人物は、偉大なだけでなく、とても魅力的な人物であることがわかってきた。だから2000年後の今でも英雄として扱われる以上に、”身近な人”としてローマ世界に名前が出てくるのです。僕は1度では飽きたらず、2度、3度読み返していくうちにちょっとずつ、カエサルを知り、理解することができているような気がします。ただ、カエサルをもっと理解するには後2,3回読み直し、さらにローマへ出かけることが必要だろう。」

僕はこうしてカエサルにはまり、ローマ史にはまっていったのでした。その興味はつきることなく気がついたら20年以上もの間、ローマに憧れ、ローマやカエサルに学び過ごしてきました。そして僕のカエサルとローマへの欲求は未だつきることなく続いている。

当時20代後半でカエサルの人生をたどりその魅力は十分理解しても、実際に50代のカエサルが成したこと、なぜそれが50代だったのかは今ひとつピンと来なかった。今はなぜカエサルが40にして立ち、50代に大事業を成し得たのか理解できる。

そんなわけで、これからローマを辿る中で「ユリウス・カエサル」に、僕の視点で触れていきたいと思います。この20年でインターネットの世界は大氾濫して、カエサルについても星の数ほどのWebページが存在します。僕は僕の視点でカエサルを知らない人のための、カエサルへの入り口となれるようなものを作りたい。自分が最初にカエサルを探したときに「あればいいな」と思ったようなそんなものを。

 

cmn.hatenablog.com

cmn.hatenablog.com