僕がまだ学生の頃にはじめてパリを訪ねたときに、「パリに来たらまず最初にシャンゼリゼを歩いて凱旋門へ行こう」と考えた。
パリ郊外のホテルから地下鉄をコンコルド広場で降り、地上に上がるとそこには360度これぞパリな風景が広がっていて、気分は大そう盛り上がったわけです。
そしてコンコルド広場からシャンゼリゼの方を眺めて見た。だだっぴろいシャンゼリゼの向こうに小さく、でも意外と大きく見える凱旋門へ向かって歩き始めた。その時に見えた凱旋門は、意外と近くに思えて「凱旋門まで歩きで楽勝」と感じたのでした。
でも実際に歩き始めて、その第一印象は間違っていたことに気づかされることになります。
何区画か歩道を歩いて、歩行者信号でシャンゼリゼを渡り凱旋門を眺める。そんな風に凱旋門との距離を確認しながら進んだのだけど、歩けど、歩けど、どんなに歩いても凱旋門は近づいてこなかった。
その時の感覚は、動く歩道を逆向きに歩いているような、「いくら歩いても近づけない凱旋門」そんな錯覚と疲労感に囚われて、どれだけ歩いたかわからないけど一体いつになったら到着できるのか、楽しい初めてのシャンゼリゼ歩きのはずが、そんな不安に駆られながらの苦行となってしまったのです。
それでも、ついにシャルルドゴール広場に到着。その時達成感というより、疲労感と疑問で頭がいっぱいだった。なんでこんなに辛かったのだろうか?
理由の一つは目の前の凱旋門を見上げた時に、わかった。凱旋門になかなか近づけなかった(と錯覚した)のは凱旋門が想像以上に巨大だったので、歩き始める前に感じた距離感がまず間違っていたらしい。遠くにあってもここまで巨大だと「思ったより近く見える」ので歩いた感じと凱旋門の近づく感覚がかなりずれていたようだ。。。写真の凱旋門とその足元にいる人の大きさからいかに巨大かがわかる。だけど実物を前にしたそのスケール感はその何倍にもなります。
次に、シャルル・ド・ゴール広場からコンコルド広場の方を見てわかるのは、コンコルド広場からこちら側へはほぼ登り坂。シャンゼリゼ途中からほぼずっと登りを歩いて、足に負担がかかったものと思う。でも長くて緩やかな上り坂なので、「動く歩道を逆向きに」という感覚はここから来てたように思える。
以上が僕のはじめてのパリ、シャンゼリゼ歩きでした。その時はそんなわけで、シャンゼリゼを楽しむというより、凱旋門への道との格闘で終わってしまった。
以来シャンゼリゼを端から端まで歩くのはこれっきりにしてます。
でもまたいつか、シャンゼリゼを歩きたい。今度はルーブルから凱旋門を抜けて、グランダルシュまで。パリの歴史を辿るが如くに。