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ガウディの足跡2 カサ・ビセンス

Casa Vicens

時期◼️1883-1885  ガウディ31-35歳

場所◼️カルリネス通り Carrer de les Carolines, 20, 08012 Barcelona, スペイン

現在◼️個人住宅

 

ガウディが手がけた初めての建築。

カサ・ビセンスはタイル商である実業家マヌエル・ビセンスの別邸として建てられました。

ガウディはこの依頼を受ける前から自分の処女作はムデハル様式にすると決めていたといいます。

 

ムデハル様式とは簡単に言うと「キリスト教建築とイスラム建築が融合したスペイン独自の様式」のこと。

歴史背景的には、8世紀にイスラム教徒がイベリア半島に侵入してから1492年のキリスト教徒が奪還するまで800年続いたレコンキスタの後、イベリア半島に残ったイスラム教徒がいて、そのイスラム教徒が伝えた建築様式とキリスト教建築様式が混ざり合ったことでムデハル様式が誕生している。民族的宗教的には敵対しても芸術文化的には優れたもの同士尊重して新しいものが生まれるという好例で、ガウディもこのムデハル様式を自身初めての建築に採用した。

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タイル商であるビセンスが依頼主であることもあり外装にはふんだんにタイルが使用されています。またガウディは使用したタイルすべてにカタルーニャに育つ植物を描き、微妙な色彩までに注意しながら細かくデザインしました。カサ・ビセンスに使用されたタイルはあまりに複雑繊細なデザインだったためタイルの準備に6年もの歳月を費やすこととなり、おまけにそれを大量に使ったために施主であるビセンスのタイル工場が経営危機に追い込まれてしまった。ただ、結果的には完成したカサ・ビセンスが大評判となり、ビセンスのタイル工場も無事盛り返すことができました。 

 

僕にとって、カサ・ビセンスというと建物そのものもさることながら、この棕櫚(シュロ)のフェンスがとても印象深い。 

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カサ・ビセンスはシュロの葉がデザインされたフェンスで囲まれていて、この鋳型もロレンソ・マタマラによるもの。このシュロのフェンスはムデハル様式の極彩色の建物本体とは対照的。ムデハル様式幾何学を基本にした外観構成に対して、自然をそのまま固めたようなシュロのフェンス。植物をモチーフにしたデザインといえばアールヌーボー、同じ要素を持ちながら、このシュロのフェンスはアールヌーボーとは表現が全然違う。その印象を言葉で言い表すとしたら、アールヌーボーは「優れた装飾」、シュロのフェンスは「生命」という感じかな。

ガウディの最初の建築。ここには以降のガウディを予見するような要素がたくさん詰まっていました。

 

***ガウディと僕

カサ・ビセンスを手がけた時、ガウディは31歳。

31歳の僕は結婚して2年。まだ子供達はいない。

仕事では後に世界に認められた製品の開発が終わって自信をつけ、エンジニアとして大きく成長した時期だ。仲間にも恵まれ、世の中に対しても、会社に対しても結果を示せた幸せな時期。

 

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