早朝散歩の後、シャモニの街外れから出る赤い登山電車に乗り、モンタンヴェールを目指しました。ここにはフランスで一番大きな氷河「メール・ド・グラス(Mer de Glace 氷海)」が間近に迫り、氷河に触れることができる、そういう場所。モンブランの裾野のジュアン台地を起点に標高差約3000mを11kmにわたって流れ下る壮大なスケールの氷河です。
僕はかねがね「いつか氷河の上に立ちたい、氷河をさわってみたい」と思っていたので、シャモニに来たらモンタンヴェールは必ずいく場所と決めていました。
*昨日でよかった
登山電車に乗る頃はシャモニはきれいに晴れ渡っていて、モンタンヴェールの方向の上空も青空が見えたのだけど、奥の山々、エギュイーユ・デュ・ミディから見える山々やエルブロンネルの方角にはけっこうな雲がかかっていた。。もし今日エギュイーユ・デュ・ミディへ行ったとしたら雲で何も見えなかっただろう。昨日行っておいて本当に良かった。そんな空模様でした。
登山電車はとことこ進み、 針のように尖ったシャモニ針峰群をぐるっと迂回してシャモニの街とは山々をはさんだ反対側まで連れて行ってくれます。そこには壮大なメール・ド・グラスが横たわり、その先端近くに登山電車の終点モンタンヴェールはあります。ここからの氷河と周りの針峰群の眺めは圧巻です。
ナイフのようなドリュ(3754m)から朝日が射す。
*氷河に迫る
モンタンヴェールの駅のはるか下のほうに壮大な氷河が広がっています。氷河めがけてジグザグに道を降りていくと氷河が間近に迫ります。モンタンヴェールの駅から続く道は氷河のすぐ脇まで続いていました。氷河の上ではなく氷河の脇に到着したのです。
下の写真、右側は氷河に削られた岩壁、左が氷河そのものです。
僕は大迫力の氷河に圧倒されました。でも、氷河の上に出ることはできなかった。
残念な気持ちで周りを見てみると、氷河の横壁にトンネルが掘ってあり”氷河博物館(正式名称は知らない)”なる物を見つけました。その中には氷の彫刻が多数ありますといった内容でした。僕は興ざめしてしまって中に入る気にはなれませんでした。ただ、おもしろかったのは、現在の博物館の入り口より10数メートル下流に同じ様な穴が掘られている。氷河は”河”という名がつているだけあって、流れがある。数年前までの入り口がその穴だったようです。
*氷河は流れる?
氷河が流れていることが発見されたのは偶然の出来事でした。氷河の上に置き忘れた椅子が44年後に、4km下流で見つかった。この出来事によって「氷河は流れている」ことが発見され、氷河が1年に90m、1時間に1cm前進していることが判ったといいます。ということは博物館の入り口も2年も立てば200mも動いてしまってそのたびに作り直さなければならないのか?これはこれで大変なことだ。そういえば岸から氷河博物館への入り口は橋がかかっていて、クレーンで動かせる構造になっていた。1日に24cm動いていく入り口のためにこのクレーン式の橋はある。
*あそこに見えるのは?
壮大な氷河だったはずなのに、博物館に興ざめしてしまって、元の道を引き返している途中でした。遙か向こうの氷河の上をよく見ると人がなにやら動いているのを発見。そして道の途中、分かれ道がそちらの方角へのびている。なんの迷いもなくそちらの方向へ、これはもう前進あるのみ。
もうちょっと寄ってみます。
なんと、氷河の上を人が歩いている!
「氷河の上に立ちたい」僕の長年の夢が叶うかもしれない。