
先日のこと、いつものように会社に最後まで残って、夜の11時過ぎに仕事を切り上げ外に出ると、外は霧の世界でした。都会と違って外には街灯も少ないこんな場所の夜の霧は、異世界に誘われてるような雰囲気が満ちています。さながら映画「フィールド・オブ・ドリームス」の中で主人公レイ・キンセラ(ケヴィン・コスナー)が天の声に導かれて伝説の野球選手アーチー“ムーンライト”グラハムを探しに街に出た夜に、霧に包まれ時空を超えて別の世界に迷い込んだあのシーンを思い出す、そんな夜でした。
もう一つの世界がそこにある。

夜霧が僕をそんな気持ちにさせる背景がもう一つあります。
それは何かというと、この夏に投稿した話。もともとここは第二次世界大戦中に陸軍の航空基地があった場所であり、若者を零戦のパイロットとして教育する学校があった場所でもあります。さらには沖縄に向けて特攻隊が飛び立った基地でもあった。二十歳そこそこの若者が「お国のために」と大切な人々と別れ、これから謳歌するはずだった人生への思いを断ち切って特攻に飛び立った場所。また終戦間際には大規模な空襲があって多くの若者が亡くなった場所でもある。

いろいろな人の思いが残されたこのあたりは、地元の人によれば時々幽霊が出るんだとか。軍服を着た軍人さんたちが隊列組んで行進してるのをみたという人もいるらしい。ここに出る幽霊さんたちは悪い人たちではないので、悪さはしないんだと教えてもらいました。

*こんな日はセブンイレブンの風景もなんかミステリアス。
外に出た瞬間、背筋をすぅと走る悪寒。霧の中から何かが出てきて連れ去られてもおかしくない、みたいなシチュエーションではある。でも全然、怖いとか気味が悪いとかいう感じがない。
いろいろ想像しながら誰もいない暗く静かな霧の夜道を歩いていると、僕はいつもと違うミステリアスな空間に逆にテンションが上がってしまった。連れ去られるなら、誰に連れ去られたら面白いかな。10年前に亡くなった父に連れ去られたら、この10年の出来事を話して、最近体は元気だけどめっきり記憶力が弱ってしまった母親の世話をお願いしよう、とか。どうせなら古代ローマに、できれば共和政期末期かハドリアヌス帝の時代のローマに連れてって欲しいとか。ピラミッドの建設現場とか、コロッセオの落成式とか妄想がつきない。もしパラレルワールドっていうのがあったら、そっちの世界にも行ってみたい。短い間ながらとてもワクワクしながらの時間でした。でも実際のところ、そんなに都合よく行きたい見たいところになんか行けるとも限らず、意に沿わない場所に連れて行かれることを考える前に、無事何事も起こらず住処に着いてしまったのです。残念。
次の日の朝、何も変わらない、いつもの1日が始まっていました。

異世界と現実世界を思考の中で彷徨った夜でした。