朝から風の強いこの日は、空に普段あまりお目にかかれない面白い雲がたくさんありました。
南の向こうの空に、たくさんの鯨のような、宇宙船の船団のような雲の群れが見えます。これらはLenticuras(レンズ雲)と呼ばれる雲でこの日のように風が強い時に発生する雲ですが、この辺ではなかなか見ることができない珍しい雲なので、雲を愛でる身としては大興奮でした。
小さなレンズ雲を従えて、優雅に浮かぶ特に大きなこの雲はマザーシップか親鯨のごとく空に浮かびます。
やがて少し時間が経つと、マザーシップの左端にラテン語で波を意味する「Fluctus」と呼ばれる雲が生まれます。ケルビン・ヘルムホルツ不安定雲(Kelvin-Helmholtz instability)ともKH波状雲(KH wave clouds)ともよばれるこの雲は、規則的な波のような形をつくります。空にこんな風に周期的な形ができるということがとても不思議。あっという間に形が崩れてしまうので、これもとても貴重な瞬間です。
マザーシップが俄然動物的な何かに見えてきます。
標本写真に出てくるようなLenticularis(レンズ雲)。
レンズがいくつも重なったような雲。これもたまりません。
むしり取ったような雲。これは何ていう名前がついているのか??
この右側の雲は、何が起こっているのかわからないって言うほど複雑で規則的な造形が見られます。
この日最後に空を見上げた時、この雲が浮かんでいました。レンズ雲と波状雲がミックスされて、まるで子犬か羊の顔をつけた雲です。雲の表現力たるや、その前に僕はひれ伏すのみです。
この日一日たくさんの不思議な雲をみて、さらに最後にこの雲を見た時、美術館で名だたる名画をたくさん見た時のような、知らない街で息を呑むような景色をみた時のような、そんな気持ちになりました。
いつもいる場所で空を見上げる、ただそれだけなのですが、それだけでいつも以上にとても幸せな一日でした。