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古代ローマ小話 真逆の二人

カエサルアウグストゥスにとっては母の従兄弟=大叔父に当たります。寛容を旨として、誰とでも気さくに接し、ユーモアを絶やさない、ハゲの女ったらしで、エピキュリアン(快楽主義者)を貫いたカエサルに対して、アウグストゥスはといえば、真面目一徹。 風貌はとても端正な顔立ちの美青年だけど、いわゆる遊びとは無縁で、その立ち居振る舞いには隙がなく、明晰な頭脳と冷徹極まる冷たい雰囲気に、対峙した人々は何もかも見透かされてしまうような気持ちになったといわれます。

どこを切り取ってもカエサルアウグストゥスは真逆の人間と言っていいでしょう。

*カエサルのコイン

*アウグストゥスのコイン

カエサル凱旋式で共にパレードした軍団兵たちは、沿道を埋める大勢の市民たちに向けてカエサルのことを「ハゲの女ったらし」と叫んで凱旋式を盛り上げたけど、もしアウグストゥスに「ハゲの女ったらし!」なんて叫んだら、多分その瞬間ローマ中の空気が凍りついたに違いありません。

カエサルアウグストゥスを象徴する話としては、エジプトのプトレマイオス朝最後の女王クレオパトラとの絡みが挙げられます。

クレオパトラがカーペットに包まれてカエサルの前に現れてから、カエサルクレオパトラを愛人として受け入れ共に過ごします。クレオパトラとの時間を楽しみつつ、エジプトを平定しながら、エジプトの天文学者の力を借りてユリウス暦を作るなど公私共に精力的に過ごしました。カエサルは感情に流されることはなく、抑えるべきとことは抑え、クレオパトラとの時間とのバランスを保ちながら公務を遂行していました。クレオパトラにはエジプトの安寧をカエサルに託す目的もあったけから、稀代の天才と世界3大美女と謳われる古代きっての聡明な女性の関係はお互いの利害も一致したと言えます。

ところがカエサルは暗殺されてしまいます。クレオパトラプトレマイオス朝を維持するために再びローマを頼らざるを得ません。クレオパトラ自身、相当に聡明な女性であったがために、あまりにも冷徹で洞察力に長けたアウグストゥスにはとても取り入ることはできないとすぐに悟ったと言います。クレオパトラにはアントニウスを頼るしか道がなく、アントニウスの軍才にわずかな望みを賭けたが叶わず最後はアントニウスと共に破滅に至ります。

 

常に寛容とユーモアを漂わせ、シリアスと絶妙なバランスを保っていたカエサルと、ユーモアなんて入る隙が全くない真面目一筋のアウグストゥス

なぜカエサルがこんな真逆の人間を自分の後継者に選んだのか不思議に思いますが、カエサルは血縁とか伝統とか家柄ではなく、国家ローマのために「やるべきことができる人材」を選んだにすぎない、と思えば疑問は潮が引くように消えていきます。

カエサルは物事の流れの中で、その時点ごとに必要な能力が明確に見えていた。共和政から帝政への大混乱の転換期は、カエサルのような人物でなければならなかった。カエサル以外誰もこれを成し遂げられる人はいなかったでしょう。そして混乱がある程度収まった後の帝政初期の土台作りのような仕事はやはりアウグストゥスのようなタイプでないとできなかった。カエサルからアウグストゥスへのバトンタッチがあったからこそローマ帝国が生まれローマが数百年生き延びた、といえます。

 

もし同時代に生きたとしても、アウグストゥスとは多分、いやほぼ確実に友達にはなれなかったと思う。

 

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