こんなローカル線に乗って、ゆっくりと。
海はひとつづきなのに、いろいろに名前がついている。
僕はこの時初めて北海という名前のついた海を見た。ひとつづきなのに、それでも「北海を見た」とか、「地中海を見た」とか、「大西洋を見た」というのは不思議と嬉しいものです。
ローカル線はこの北海沿いをひた走ります。
アバディーン(Aberdeen)
ここはこのローカル線の終点、アバディーンという街。
アバディーンはスコットランド第3の街、北海油田の石油産出の拠点、ヨーロッパの石油の首都と呼ばれているらしい。
当時はそんなことも知らず、駅の近くを散策しただけだけですぐ次の汽車に乗って出発してしまった。当時はなんとなく、目的の街以外にも足跡を残したかったんです。初めての旅はこんな風にいろいろなところに行きました。
次の目的地、スコットランドの首都エディンバラに到着しました。到着して駅を出て街に繰り出したときに、あることに気づきました。スコットランドの街は建物に使っている石の影響か、全般的に暗く重厚な印象を醸し出しています。そしてこれは気のせいなのかもしれないのだけど、人がまばら。7月だし、この時はそんなに時間も遅くなかったはずなのだけど。。
スコットランドの首都でありながら、グラスゴーに次ぐスコットランド第2の都市。政治と経済、別々の街が機能を果たしています。
街の全体を眺めようとカールトンヒルへ 。上の写真は駅を出てすぐ、プリンシズ通りをカールトンヒルへ向かう途中振り返ってみたのがこの写真です。
■カールトンヒル(Calton Hill)
駅から歩いて街を一望できる丘へ。エディンバラの観光スポットの上位にいるはずのここも人がほとんどいなかった。イギリスではロンドンに次いで観光客の多い街のはずになの。この寂しさはなんだったのか?
カールトンヒルにはいくつかモニュメントが建っている。街の景色以外に、この時の目当てはギリシア神殿の柱のレプリカ。今見るとこれはアテネのパルテノン神殿の正面の一部だとわかる。当時からギリシア神殿に憧れがあって、本物は中々見ることができないので、レプリカのこれでもいいから早くみてみたかったんです。それで、エディンバラについて最初にカールトンヒルへ行きたかったのです。
この旅行の後、ギリシアもローマも出かけて、本物をたくさん見てきた今、当時スコットランドにパルテノン神殿を求めて行ったことがとてもおかしく、一方で実は僕の人生の半分はここから始まっていたんだなと懐かしく思えます。
市街を見下ろすように、エディンバラ城は小高い丘に位置しています。
市街とエディンバラ城の丘に挟まれた谷は、川が流れているのかと思うと鉄道が走っている。駅もこの谷の中にある。緑の谷はプリンシズ・ストリートガーデンズという公園になっていて、特にこのロス・ファウンテンのある場所がとても心地よい。この時もここで城を眺めながら、サンドイッチのお昼を食べた。
このロス・ファウンテン越しに眺めるエディンバラ城は僕のエディンバラの中で一番好きな景色。
エディンバラ城は12世紀からここに建ちます。スコットランドの成り立ちはちょっと複雑で辛い歴史があります。そのスコットランドの英雄と呼ばれる二人がエディンバラ城の入り口を守っています。
城門に立つロバート・ブルースとウィリアム・ウォレスです。この話は別の機械に。
とても重厚な印象の建物は、エディンバラの街と同じく、使っている石材によるところ。
北側のテラスには昔の大砲がずらりと並びます。
ここからの眺め。
今では谷底を鉄道が走り、公園があり、その向こうにエディンバラの街が続きます。遠くにカールトンヒルも見えます。
この大砲が現役の頃はどんな眺めだったのか?今のような穏やかな気持ちでは眺められなかったでしょう。。。
■ホリールード宮殿(Palace of Holyroodhouse)
奥に見えるのはアーサーズシートと呼ばれる丘。見事な断層はソールズベリー・クラックス。このホリールード宮殿の敷地の中にあります。
もともと古く廃墟となっていた修道院の場所に、12世紀に宮殿が建てられたのがホリールード宮殿の始まり。王族の結婚式や戴冠式が行われていた由緒ある宮殿でした。16世紀からはスコットランドの王宮となったのですが、再びイングランドとの戦争によって建物は全壊。17世紀に今の建物が再建されました。
今ではエリザベス女王の夏の避暑のための公邸として使用されています。
このホリールードアビーは宮殿に隣接する寺院で、今は廃墟のまま残っています。
ここは歴代のスコットランド王が埋葬されている場所です。宗教の、また国同士の戦争に翻弄され、自然災害にも見舞われ、修復もされずにこの姿を保ち続ける。スコットランドの歴史そのものと言ってもいいかもしれません。
当時、あまり予備知識なしに訪れたエディンバラだったけど、街の建物や城から何か物悲しい歴史を感じ取ることができたのをよく覚えています。