今まで3回ホーエンシュバンガウに滞在して、一度も欠かさなかったのがテゲルベルクのトレッキング。トレッキングといってもとても軽い山歩きです。山を歩くこと自体がとても気持ち良いのと、何よりその途中で見ることができるノイシュバンシュタイン城の眺めがとても素晴らしく、その景色と空気を味わいたくて毎回必ず歩いています。
今回はそのトレッキングのお話です。
テゲルベルクの山の上まで連れて行ってくれるロープウェイ(Tegelberg bahn)乗り場まで、ホーエンシュバンガウの村から2kmほど、シュバンガウの平原をのんびり30〜40分の散策です。
とても良い天気だったある年、朝一番に乗ろうと早起きしてホテルを出て、ロープウェイ乗り場を目指します。最初はまだ暗かったシュバンガウの山と平原に徐々に朝日の光が満ちていくのがとても綺麗です。

少しモヤがかかった景色は、朝日が差し込み白く光に包まれ、そのあと徐々に色鮮やかになっていく。こんな景色に包まれて心も体も洗われる思いです。
小鳥のさえずりを聞きながら歩き続け、ふと山の方を眺めれば、そこにはノイシュバンシュタイン城が静かに佇みます。

まだ、城のところには朝日が届いておらず、手前の光あふれる平原と木々と、山の上の城のコントラストがとても心地よいです。
やがてロープウェイ乗り場に到着して、ロープウェイで山の上を目指します。10分くらいで山の上に出ると ここからは広大なシュバンガウの平原と湖、その向こうのはるか遠くの方まで見渡せます。

ロープウェイの乗り場のすぐ近くにはタンデムフライト(プロのおなかにくっついての観光パラグライダー)の滑走路があって、天気が良かったこの年はたくさんのパラグライダーが離陸していきました。プロに抱えられたお客はもれなくビデオカメラ片手にとてもうれしそうにして出発の順番を待っています。僅かな時間に何組も飛んでいきました。

パラグライダーは、走り出したと思ったらあっという間に遥か彼方へ。

この年、地上からもたくさんのパラグライダーがノイシュバンシュタイン城の上を飛んでいたのがよく見えました。ここから飛んでたんですね。
さて、テゲルベルクにはいくつかトレッキングコースが設定されています。ロープウェイを降りてすぐ、かなり大雑把な、でも味のある地図が示されていて、コースが色分けされている。
僕はおそらく一番楽であろう、青のコースを毎回辿ります。ここからノイシュバンシュタイン城まで緩やかな下り道の簡単なコースです。
スタートして間もなく、野生の鹿たちに遭遇。

しばらくは山の木々の間を進んでいきます。緑の中を進むのはとても気持ち良い。そしてある時、途中に獣道の入り口ようなものがあるのに気がつきました。なんだろうと身をかがめて恐る恐る入っていくと、絶壁の端に出た。そしてそこからはこんな景色が目の前に現れたのでした。

はるか眼下にノイシュバンシュタイン城、ホーエンシュバンガウの村、アルプ湖から遠く雪をかぶったアルプスの山々まで見渡せる。でも、足元は切り立った崖なので注意が必要です。

ここからしばらく進むとまた脇道が現れ、進んでいくとこんな景色が待っています。
このコースにはこんな隠れポイントがいくつか存在しました。

ところどころの獣道で絶景を堪能しながら徐々に山を下り、やがてホーエンシュバンガウのある場所に到着します。
ここは僕がホーエンシュバンガウで最も好きな場所。獣道ではなく、トレッキングコースが崖っぷちに面している場所で、ちょうど木々がきれて視界が開けるんです。ここは足元の崖とその下の谷底を挟んでノイシュバンシュタインがとても近く、きれいに見える場所です。そして、ここは観光客でごった返す城内の混雑とも、マリエン橋の騒々しさとも無縁の別世界。倒木に腰掛けると僕の足元は絶壁で、城と僕との間には空気以外に何も無い。

僕はいつもここの倒木に腰掛け、長いこと城を眺めてすごします。この場所はいつまでいても飽きることがありません。ここはノイシュバンシュタイン城を独り占めしているような気持ちになれる、そんな特別な場所です。僕はこの時間を作りたいがために、毎回ホーエンシュバンガウに来るとこのトレッキングコースを歩くのです。
毎回後ろ髪を引かれる思いでここを去り、またひたすら道を進むと、先に紹介したマリエン橋に到着して、トレッキングコースは終わります。

さっきの静寂とは反対に、マリエン橋は観光客で賑わっています。でも観光客で溢れていても、ここの景色もやっぱり素晴らしいですね。
僕はこれらの景色が見たくて、ホーエンシュバンガウにくると必ずテゲルベルクのロープウェイに乗り、青のトレッキングコースを歩きます。次にホーエンシュバンガウに行くチャンスがあれば、やはり必ず行くでしょう。
あの景色を見るために。