ホーエンシュバンガウ城
ホーエンシュバンガウにあるもうひとつの城。
それがこのホーエンシュバンガウ城(1832-1836)。
実はこちらの城の方が歴史が古い。
ここにはもともと12世紀に建てられたシュバンシュタイン城という古い城があって、当時のバイエルン国皇太子マクシミリアン2世がすっかり荒廃していたこの城を買い取り再建に着手した。その結果、中庭にある白鳥の泉がある、ホーエンシュバンガウ城として生まれ変わったのでした。
ノイシュバンシュタイン城はその30年後に着工、元々ここにあったシュバンシュタイン城にちなんでノイ(=新)シュバンシュタイン城と呼ばれるようになりました。
近くで見るとおもちゃのように見えるこのホーエンシュバンガウ城もノイシュバンシュタイン城あたりから眺めると周りの景色にとけ込んでとても絵画的です。
かつてシュバンガウ一帯は王家の休養地であり「自然宮殿庭園」と呼ばれていました。
ホーエンシュバンガウ城はノイシュバンシュタイン城を建てたルートヴィヒ2世が生まれ育った城でもあり、ルートヴィヒ2世は生まれた時からこのシュバンガウの自然に慣れ親しんでいたのです。
またシュバンガウはワーグナーの楽劇「ローエングリン」に登場する白鳥伝説の舞台であったこともあり、ホーエンシュバンガウ城にはローエングリンの場面が壁画に描きこまれています。それを見て育ったルートヴィヒ2世はワーグナーを心酔して、直接親交を深めてもいました。そして、現実世界に失望して以降、ワーグナーの楽劇の世界に、御伽の世界に現実逃避の場所を求めるようになるのです。
ルートヴィヒ2世は新しい城を建てる場所をバイエルンの各地に探し求めたのだけど、最終的にはホーエンシュバンガウを選ぶのです。
自分が生まれ育った自然豊かなホーエンシュバンガウが「見つけうる限り、最も美しい場所」だったと、新しい城を建てる場所に選んだのでした。
とても美しい自然とそこに溶け込む白亜の城を堪能した後に、その始まりであるホーエンシュバンガウ城を訪ねると何かやるせない、ちょっと物悲しい感情が沸き起こってくるのです。
でも、ホーエンシュバンガウにいる間はその豊かで美しい自然と、そこに調和するノイシュバンシュタイン城をひたすら堪能すればいいのです。
なぜなら、ルートヴィヒ2世が後世の人々にそうしてもらえるように、世の中の、自分の醜いものを全て背負って死んでいったのだから。
僕のホーエンシュバンガウの旅はここでおしまい。
またここに行かれるその日まで。