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ルッカ小話 名画修復

f:id:fukarinka:20211002210626j:plain名画の修復といえば以前、ミラノでレオナルドの最後の晩餐の修復現場を見たけど、その時絵は櫓に隠されて、修復作業そのものは見ることできなかった。

有名な修復といえばこの「最後の晩餐」やバチカンシスティーナ礼拝堂ミケランジェロの「天地創造」「最後の審判」の壁画というように一大プロジェクトをイメージします。最新技術を駆使して積もり積もった汚れと後世に書き加えられた間違った修復後を除去して、もともとの絵を取り戻す。最新の修復の考え方は「治す」というより「洗う」という表現が正しいかもしれません。その結果生まれ変わったそれらの絵は、オリジナルの色彩や画家の筆感触を現代に伝えることに成功しています。

一方で過去の修復は、修復という名の加筆である場合が多かったようです。特に「最後の晩餐」はレオナルドの実験的な技法のために完成直後から劣化が始まり、ちょこちょこ修復作業という名の加筆が行われてきました。その結果、最後の晩餐はずいぶん早い時期から、「レオナルドの作品ではなくなってしまった」と嘆かれるほどだったといいます。

イタリア絵画にはルネサンス期から500年の歴史があり、大小さまざまな作品があちこちに散らばっている。レオナルドやミケランジェロといったスーパースターが描いた人類の至宝からそうでないものまで星の数ほどの作品が経年劣化を重ねているわけです。そうなると全ての絵に一大プロジェクト的な修復は難しく、修復師がいろいろなレベルの修復を行うことになるのです。

僕はここルッカのサン・フレディアーノ教会で壁画の修復作業を見ました。そう、多分修復だったんだろうと思います。

教会に入り堂内をぐるっと一回りすると、遠くで、その一角の小さな壁画で修復らしき作業をしているのが見えました。修復作業をこんな間近で見られるなんて、こんなチャンスは滅多にない!と期待満々で修復現場に近寄っていったわけですが、一歩一歩進むにつれてなんだか頭の中のハテナマークがどんどん大きくなってきたのでした。

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とてもラフな格好のお兄ちゃんがポケット片手にいかにもテキトーに、格好通りラフな仕事をしている(ようにしか見えない)。いや、実はこう見えて天才修復師なのか・・

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いや、でもやはりどこからどう見ても真面目に修復作業をしているようには見えない。。

痛みの激しい絵に、そのまま絵の具を重ねているように見える。今までいろいろ調べたところの過去の「まちがった修復」を生で見ている、そんな感じでした。

正直このお兄ちゃんも「僕でいいのかな」といった表情浮かべながらやっていたような。。

 

サン・フレディアーノ教会はルッカを代表する3つの古い教会の一つ。6世紀からの歴史がある。そんな重要な教会の壁画修復として、いかがなもんなのだろう。。。

いろいろな事情はあるだろう。でもそこを何とか古いものを正しく後世に残す、そんな修復を守り抜いて欲しい。また、あのお兄ちゃんが実は天才修復師であったと思いたい。

 

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