cafe mare nostrum

旅行の記憶と何気ない日常を

トレヴィの泉 コインの行方

僕はどこに行っても必ず早朝の街を散策します。観光地であればあるほど昼間の大混雑を避けてゆっくり落ち着いて街や建物を堪能するためで、この日も早朝にローマの街を歩いてトレヴィの泉に来ました。街全体が博物館のようで、観光客で溢れかえる昼間のローマの街が、嘘のように朝のローマの街には人がいない。まあ、どこもそうだけど、観光客はみんな、前の夜遅くまで遊び、朝はゆっくりするので、朝の散歩はどこもとても気持ちが良いのです。

ある朝、ローマの街を歩いてトレヴィの泉に近づくと、なんか今までとは違った雰囲気が漂っていることに気づきました。何が変なんだろうと思ったら、トレヴィの泉の水がない!水がすっかり抜かれていた(!?)のでした。

これは珍しい光景だ!水のないトレヴィの泉と何やらそこで作業している数名のおじさんたち。何の作業をしてるのかと思ったら泉の底にびっしりと散らばった無数のコインを集めているようだ。

なんということだ!世界中から来た人々の、たくさんの願いを込めて投げ入れたコイン達はこのおじさん達に回収されていたのだ!なんだか見てはいけないものを見てしまった、そんな気分になりました。

 

現実問題として、あれだけの観光客が毎日毎日みんなで1枚か2枚のコイン、時には3枚のコインを投げ入れれば、あっという間にトレヴィの泉はコインで埋まり、豊かな水を湛える泉ではなく、コインの泉になってしまう。そこでローマ市は考えた。トレヴィの泉トレヴィの泉であり続けるために、週2回早朝にこうやって水を抜いてコインを集めよう、ということにしたそうです。僕はトレヴィの泉のこの姿を見るまで、「永遠の都」ローマで投げたコインは永遠にこの泉の中にあるものだ、と勝手に思っていた。我ながら、なんとおめでたい発想だと思います。

僕はこの時、なんか現実に打ちひしがれて、こんな面白い景色なのに写真に収めることをしなかった。当時はデジカメではなくフィルムだったので枚数に限りもあったし、また今ほど「記録すること」を意識してなかったのもあって、水が抜かれてコインを回収するトレヴィの泉の写真を撮らなかった。今モーレツに後悔しています。

この時撮った1枚がこの下にあります。この時はまだ現実を直視できず、「水が抜かれた泉」の部分は見事にカットしている。我ながらつまらない写真だと思う。。。。

ところで、トレヴィの泉で回収されたコインは一体どこへいくのか?

偶然見つけたロイターの記事(下にリンクがあります)によれば、週2回行われる作業で集められる、毎回バケツ何倍分にもなるコインは、カトリック系の慈善団体が引き取り、貧困者を助ける無料の食堂運営や福祉プロジェクトといった、いわゆる「困っている人を助ける」活動に使われているそうです(この記事にはコインを回収する写真があリます)。記事によれば2022年は年間2億2500万円分の願いのコインが集まったそうです。願いを込めて投げ入れたコインがトレヴィの泉から回収されるのはちょっと悲しいけど、それが慈善活動に使われるなら、きっとコインも本望だろう。

ただ、最後の慈善活動にたどり着くまでには、たくさんの人手と時間をかけなければなりません。回収したコインは洗浄され、一枚一枚選別され、仕分けして、数えて。。。たくさんの工数がかかる。中でも一番大変なのは、コインの選別でしょうか。世界中からくる観光客のものなので、コインはユーロとは限らない。さらに僕が旅してた頃はまだユーロに統一される前だったので、イタリアのリラもあれば、フランスフラン、スイスフラン、ベルギーフランもあっただろうし、ドイツマルクも、ギリシアドラクマトルコリラもスペインのペセタもあっただろう。ドルも円もたくさんあったでしょうね。回収された各国コインを選別するのはそりゃ大変な作業でしょう。。。ちなみに僕が投げたのは日本の五円玉でした。。。

いずれにしても、「ローマ再訪」とか、「好きな人とずっと一緒に」とか、それと一緒に込められたたくさんの人々の願いが込められたコインは、こうして回収され選別され、たくさんの人の手を経てようやく慈善活動に使えるようになるのです。

とても素敵な話です。

 

 

www.reuters.com

 

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