スイス・アルプスの中で最も美しい(と思う)山マッターホルン(4478m)。
このマッターホルンを求めて、この小さな村ツェルマットに世界中から観光客が集まって来るのです。
ツェルマットの村は建物は色とりどりの花で飾られ、見た目にとても清潔でとても綺麗。また、見た目だけでなく空気もきれい。その環境を守るために、排気ガスで空気を汚すエンジン付き車両を村に入れない事でも有名です。なので、ヨーロッパ各地から車で来る人々は、ツェルマットの手前の駅の駐車場に車を預けてから、一駅電車でツェルマットに向かうのです。
この村を巨大なマッターホルンが見下ろしている。僕がここに来た目的はただ一つ、マッターホルンをこの目で見ること。でも、ここには近くて遠いマッターホルンがあったのでした。
玄関口である街ブリーク(Brig)でこの赤い電車に乗り換えます。電車は氷河の川のわきを、谷をひたすら進んでいきます。
テッシュという谷間の駅のそばには広い駐車場に車がたくさん止まっているのが見えた。この先自動車は乗り入れ禁止です。
次の駅が、終点ツェルマット。
列車を降りてすぐ 、”世界のリゾート”ツェルマットの短いメインストリートは人でごった返していました。
僕は宿を決めて、すぐ村にでます。
目指すはマッターホルンがよく見える場所へ。村を歩いて見つけたのはここ、村外れの公園。でも、雲で覆われていて、どこにどんな風にマッターホルンがあるのか今ひとつわからない。
でも、ここでマッターホルンが現れるのを待つことにしました。雲はどうやら左から流れてマッターホルンにぶつかり、広がるように右へ流れていくようだ。
僕は芝生に寝ころんでマッターホルンの方角をず~っと眺めて、時折仰向けになって空の雲を眺めたりして、マッターホルンにかかる雲が切れるのをまだかまだかとずいぶん長いこと待っていた。
マッターホルンはなかなか現れなかったけど、考えようによってはとても贅沢な時間だった。ひたすらマッターホルンにかかる雲の動きを眺め、時々おもしろいカタチの雲を見つけては写真を撮る。
これは魔女
これは犬?馬?
日差しは柔らかくて気持ちがいいし、昼寝でもしたい気分だったのだけど、マッターホルンの姿を見るまでは眠るわけにはいかない。
そしてついに、ようやくマッターホルンの肩が現れた。その姿は想像していたより遙かに大きい。本当に大きい。写真で見ると本物のサイズ感、巨大さが伝わらないのだけど、本当に大きかった。
それまでのんきに過ごしていた僕に、一気に緊張感が。僕の目はそのチラッと雲から覗かれた肩に釘づけになりました。
雲は流れてマッターホルンの姿は見え隠れ、そのうち雲は切れるどころか再びマッターホルン全体を隠してしまったのでした。
じ~っと雲の流れを追いかけているうちに流石に疲れてしまって、気分転換にツェルマットの村へ出かけることにしました。
村に入ってしばらくすると、人々が歩きながら空を指差しています。もしやと思いその方向を見たとき、巨大なピラミッドのような山の姿が現れていました。
僕は思わず建物がじゃまになる街中から、さっきの公園へと走りました。
まだ山頂にはマッターホルンからわき出るように雲が付いているのだけど、マッターホルンのほぼ全貌を見ることができた。
ねばって、ねばってなかなか拝めなかったのに、ちょっと目を離したすきに姿を現す。意地が悪い。
山間に日が沈んだころ、ようやく空の雲全体がどこかへ消えて山頂のとんがりが姿を現した。初めてみたマッターホルンは想像以上に大きく、その姿は”巨人”を思わせます。村の中で建物の合間から見えたマッターホルンの姿はまさしく「巨人」そのものでした。
僕はこの日の大半をこの公園で過ごし、ようやく現れたマッターホルンを、暗くなって見えなくなるまで堪能しました。
この調子なら、明日のハイキングも大丈夫だろう。明日の朝、日の出前に起きてマッターホルンの夜明けを眺める予定。