
Yerebatan Sarnıcı
アヤソフィアとは道挟んだ向かい側の小さな入り口があります。ここから地下に降りていくと、かつてのコンスタンティノープルの地下貯水槽があります。コンスタンティノープルには60ヶ所に地下の貯水槽があるといいます。過去幾度かのコンスタンティノープル攻略戦では、市内に引かれた水道を破壊されたり、水に毒を入れられたり、コンスタンティノープルの水の確保に苦心したその経験から、非常時の市民の水の確保のために作られたのが地下貯水槽です。現在「地下宮殿」と呼ばれているこの場所は、コンスタンティノープル最大のもの。ユスティニアヌス帝によって、アヤソフィアとほぼ同じ時期、532年にわずか数ヶ月の工期で完成し、水はコンスタンティノープル郊外のベオグラードの森からヴァレンス水道橋を通って貯水槽に引かれました。その後16世紀まで1000年もの間使用された後、オスマントルコの時代には放置され、19世紀になって修復され今に至ります。
幅70m,奥行き140m,高さ8mの地下空間には、旧ローマ帝国各地にある神殿から336本もの円柱が持ち込まれ、この地下空間を支えています。

ここが「地下宮殿」と呼ばれるのは、このずらりと並ぶ円柱の景観によるところが大きいですね。
近年の修復では床面をレンガで覆われ、この時まるまる太った魚がぬくぬくと泳いでいました。

ローマ各地から運ばれた円柱はレンガでアーチやヴォールトを構成した天井を支えます。ローマ各地の神殿などから円柱が運ばれたため、その様式やサイズなどバラバラで、ここにはたくさんの種類の円柱がずらりと並んでいます。それにしてもアヤソフィアも然りですが、ビザンチン(東ローマ)帝国はキリスト教国家であるので、ローマ建築から円柱を抜き取るなどは何の躊躇もない。

ドーリア、イオニア、コリントといったギリシアから続く伝統的な円柱に混じって不思議な柱も置かれています。

通称「涙の柱」
ギリシアのどこかの神殿から運ばれたといい(諸説あり)、労働者や奴隷の犠牲を悼んだとも言われ、円柱に刻まれる模様と相まって「涙の柱」と呼ばれています。

メデューサの首
地下宮殿で最も有名で謎めいたものです。元々地下宮殿を支える円柱群はローマ各地の神殿や公共建築から奪い取ってきたもので、サイズはバラバラ。高さの違いを補填するのに色々、このメデューサが置かれた目的の一つは高さ合わせです。

メデューサはギリシア神話に登場するゴルゴン三姉妹のうちの一人。蛇の髪の毛を持ち、その目で見たものを石に変えてしますます。神話では英雄ペルセウスによって首を切り落とされ、その首は魔除けの象徴となる。古代の建物には魔除けとしてメデューサが掲げられるものが多いのです。この地下宮殿では、かつてどこかの建物に据え置かれていたメデューサの首が二つあって、柱の土台として一つは横向きに、一つは逆さまに配置されています。横と縦の分けて置かれているのはおそらく高さ合わせ。上むきではなく横か逆さまなのはメデューサの魔力でコンスタンティノープルに災いをもたらさないようにしたと思われる。

顔を少し水に浸して、1500年もの間コンスタンティノープルの地下で過ごしたメデューサ。水に浸かりながら少し微笑みを浮かべているように見えなくもない。

かつてコンスタンティノープルのライフラインであった地下宮殿は今ではすっかり観光地です。遊歩道が敷かれ、ライトアップされ、クラシックのコンサートなどが行われる。現代のそんな様子をこのメデューサたちはどんな思いで見ているだろうか?