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旅行の記憶と何気ない日常を

小話 新宿のゴッホ再会

「SNSでの拡散を期待して館内撮影を許可する美術館が増えた」とニュースで知りました。ふと思い返せば、僕がヨーロッパによく出かけていた頃から大英博物館もルーブルもオルセーも名だたるほとんどの美術館で、作品に悪影響を与えない限り(フラッシュとか)撮影は自由だったと思います。それに反して日本では、ほとんどのところが撮影禁止だったと思います。確かに最近、撮影許可する美術館が増えている実感はあります。その一つがSOMPO美術館。ここには世界に七枚しかないゴッホの「ひまわり」の一枚があります。日本の新宿で常にゴッホのひまわりを見ることができるのは本当に幸せです。前回ゴッホに会いに行ったのがいつだったか、うる覚えですが、最近SOMPO美術館も撮影解禁になって、ひまわりも自由に撮影できるようになったとか。

*こちらは過去に書いたSOMPO美術館のひまわりの記事です

cmn.hatenablog.com

今回、久しぶりにゴッホのひまわりに会いにSOMPO美術館に行ってきました。もともと大きくなって美術に興味を持ち始めた娘に、本物ひまわりを見せるというのが目的だったのですが、ちょうど好きな画家の一人であるモーリス・ユトリロ展をやってるということで一石二鳥な日でした。

 

ゴッホの前にユトリロですが、

ユトリロはパリのモンマルトルの素朴な風景をたくさん描いた画家で、19世紀終わり頃から活躍した画家。特にユトリロのモンマルトルの景色はひと言で表すなら「陰鬱」なのですが、静かなモンマルトルの情景は不思議なくらい引き込まれるのです。

休日に行ったのですが、人も少なくストレスなく堪能することができました。

こちらは違う季節に同じ場所からモンマルトルあるシャンソン酒場「ラパン・アジル」を描いたもの。三枚の絵が描かれています。

どこもこのくらいの密度で鑑賞できると良いのですが。。。

こちらもモンマルトルのサン・リュスティック通を描いた作品。

やはりサクレクール寺院がある絵はまた良いものです。

絵を見るとき、遠くから見て、近くから見て、筆跡がわかるくらい近よって見たりするのですが、写真が撮れるというのは、こんなふうに細かい筆使いとか色の載せ方とかが記憶できるので、まあ自己満足なだけですが、良いものです。こういう絵の具の載せ方すると、ああいう風に見えるのだ、と感心しきりです。

 

僕の好きな路地ノルヴァン通の絵(部分)。

*モンマルトルとユトリロに関する記事

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今回のユトリロ展は7割くらいが日本の美術館やコレクターからの借り物で構成されていて、一部の作品だけ撮影禁止となっていました。学芸員の方に撮影OKとNGは何で決まるのですか?と聞いたところ、借用元の美術館の意向だそうで、よく見ると確かにある美術館の作品は全て撮影禁止となっていました。

 

さて、一通りユトリロを堪能して、最後に一枚、ゴッホの「ひまわり」が変わらずにありました。防弾ガラスの向こうは完全空調の万全の保存体制。この一枚が日本にあること自体が奇跡と言って良いでしょう。その奇跡はバブル時代に日本中が浮かれている中、SOMPO美術館が53億円という大金をこの絵に支払った。多くのバブル投資とは違い、SOMPO美術館はこの絵が日本にあることの意味を見据えて、大事に「ひまわり」を展示し続けてくれている。この作品を生み出してくれたゴッホにも感謝、SOMPO美術館にも感謝なのです。

今回館内撮影がOKとなって、僕は色々な角度や距離から記録を残しました。一緒にいた娘は面白がって、僕のそんな姿を写真に撮ってたようです。

以前はこの「ひまわり」の隣には、ゴーギャンの「アリスカンの並木道」という絵が並んで展示されていました。ゴッホがアルルで芸術家が共同生活を夢見て過ごした時に唯一ゴッホの誘いに応えてアルルに来たのがゴーギャンでした。そして、その時に同じキャンパス地を分け合って描いたと言われるのがゴーギャンの「アリスカンの並木道」で、その二つの作品を隣り合わせに展示していたことにとても共感してたのですが、近年は完全に別々の展示になってしまったようです。

長いことゴッホの前で過ごした後に、娘がぼそっと一言「ゴッホって何がすごいんだろう?」と呟きました。僕は「あと5年か10年したらそれがわかるよ」と返しておきました。また時々本当のゴッホを見て、いろんな作品を見て、そうすれば自然にゴッホの何が良いのか自分のなかで何に惹かれるのかがわかるようになるはず。

*こちらはゴッホに関する記事へのリンク集です。

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美術館の作品を写真に収める、というのはスマホ全盛期にあって、個人の行動の記録になるのとまたそれがSNSにのってWEBの世界を駆け巡り拡散する。するとそれに刺激された人々が本物を見たくなって美術館を訪れる。そんな構図があるようで、美術館としては絵葉書や関連グッズの売り上げが減るようですが、それ以上に人が集まるようになるだろうし、それより何より、より多くの人が作品を知る機会を得て、本物の作品を見る機会に恵まれるわけで、日本に住んでる人々にとっては良い面がたくさんある。どんどん撮影OKにしてほしいものです。

どんなにスマホのカメラ性能があがろうと、本物をこの目で見るに優ることはないのだから、美術館も何も恐れることはないと思います。

久しぶりの新宿で空を見上げると、高層ビル群がまるで森の木々のように空を覆っていました。これも何十年も新宿に来ていたのに、初めての発見でした。

 

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